Made to order
□泣きながら、繋がる
1ページ/4ページ
「―っ、まっ、て、」
君が、
嬌声に混じってそう言った。
俺はとても忠実な犬の様に、その場でぴたりと止まった。
「まって…」
もう一度、君は自分の息を整えながら言った。
「…うん」
余裕がある様に装って、俺は出来るだけ平静な声で返した。
本当はあと数回突き上げて、さっさと吐き出してしまいたかった。
(冷たいとかじゃなくて、辛いものなんだよ?生理的に。)
だけど君の「まって」にも慣れてきたんだ。
君はいつも、
行為の最中、果てる寸前に「まって」と言う。
俺はいつもその度に待った。
君のお願いなら何でも聞いてあげたかったし、余裕ぶって君より優位に立ちたかった。
(そんなフリをする事事態が滑稽だとも分かっていたけれど)
君がどんな気持ちで、
「まって」と言っていたかなんて考えた事なかった。
この夜まで。
「…大丈夫?つらい?」
君を組み敷き、見下ろし、君の中に侵入したままで何だけれど。
(だって抜こうとしても君は「まって」というから)
「大丈夫…ごめんね、…まって」
君の浅くて速い呼吸とか、上気した頬に張り付く髪や、濡れた(濡らした、とも言う)唇に、おあずけを喰らっている状態とはいえ、萎えるどころか更に欲情するもんだから俺も相当だと思う。
はぁ、と君はひとつ大きく呼吸をした。
(この後君はしばらく目を瞑り、もうひとつ大きく呼吸をして、「いいよ」と俺に言うんだ)
まるで決まり事のように、いつもそうだった。だから分かっていた。
そしてやっぱりそうだった。
「―――うん、ごねんね。いいよ」
君は頼りなく微笑んで俺を見上げる。
揺らぐその目に、庇護欲をそそられながらも、めちゃくちゃにしてやりたくなる。
そんな両面を持つ、俺はおかしいのかな。
(そんな俺を受け入れる君も、おかしいのか、果て無く優しいか、どちらかなんだろう)
行為を再開させて、君を犯す。
君の、我慢しきれずに漏れる嬌声が俺の耳をくすぐる。
めちゃくちゃにしたい。
めちゃくちゃに、
めちゃくちゃに。
(ああ、)
色々と、理性的に行動したり、グダグダと小賢しく考えたりしているけど、
やってる事は犬だな。
ふと、そう思ったら、
俺は止まってしまった。
萎えたわけでもなくて、この、行為が分からなくなった。