イチウリ小説
□好きになったら負け
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放課後。
生徒がまばらになった教室で黒崎は僕の席にきた。
いつもの不機嫌な顔も、今日はどこか穏やかな表情だった。
「なあ、石田・・・ちょっといいか?」
「?別に・・・いいけど・・・」
「そうか、じゃあちょっとついてきてくれ」
「え?って、ちょ!黒崎!!!」
黒崎は僕の手をひっぱって、走って教室を出た。
教室にいた何人かの生徒はぎょっとしながら、僕らを見てた。
そのスピードはすごく早くて、僕のかけていたメガネがずり落ちそうだった。
でも、どことなく楽しい・・・なんて思ったのは僕だけなんだろうか。
このときの僕は少し時をかける少女になったようだった。