フォレスト限定小説
□100円ショップの塩田さん
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その出会いは、突然だった。
一目惚れなんて、運命なんてリア充の戯言だと思ってた。
でもその人は私の前に現れた。
100円ショップの塩田さん。
今日も欲しくない商品を買っている。
私はお客で、塩田さんは店員。
私の名前すら知らない只の客。
「108円になります。」
レジの横のトレイに108円を置く。
「ありがとうございました」
事務的な挨拶を言われ、黙ってうなずく。
次の客が来て、塩田さんが対応する。
今日も声をかけられなかった。
「はぁ……」
小さなレジ袋に入った白地に黄色やオレンジの星の模様が印刷されたマスキングテープを覗いてため息をつく。
明日は日曜日。
日曜は100円ショップに来ないい事にしている。
「ストーカーみたい。」
夕方の空に白い息と共に吐き出した言葉に、苦笑した。