頂き物
□信じてくれるから
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声を掛けておいた子たちが集まってきて、早速かくれんぼが始まった。
鬼を残して、みんな思い思いの場所に散っていく。
サクラもしばらくオロオロしてたけど、やがてどこかに走っていった。
自分としてはうまく隠れたつもりでも、やはり遊び慣れた土地ということもあって、鬼は次々に隠れ場所を暴いていく。
私もサクラも、結局鬼に見つかってしまい、木の下でこの回に区切りが着くのを待った。
こうやって一度見つかってしまえば、後は暇なものだ。
早くみんな見つかってくれないかなぁなんて思いながらプラプラしていると、鬼役の子が困惑した表情で戻ってきた。
「タクトが見つからないんだ」
その時、もうすでに、残るはタクトだけになっていた。
そのタクトがどうしても見つからないという。
よっぽど上手い隠れ場所見つけたのねぇ。
けど、このままつっ立ってるのも飽きちゃったし…
「じゃ、降参してタクトに出てきてもらおっか」
私たちは辺りをタクトの名前を呼びながら歩いた。
「タクトー!あんたの勝ちよ!もう終わりだから出てきなー!」
それでもタクトはなかなか姿を現さない。
隠れ場所を知られるのが嫌で出てこられないのかと思い、みんなを一ヶ所に集めて目を瞑ってみたが、それでもやっぱり出てこなかった。
「用事でもできて帰っちゃったんじゃないの?」
一人の子が軽い口調で言った。
そうだねーと口々に同意の声が上がり、私もそうかもしれないと納得しかけた時、サクラが何かを言いたそうにしているのに気づいた。
「なに、サクラ、どうかした?」
サクラはおずおずと左のほうを指差す。
「タクトくん、あっちの方に走っていったよ」
サクラが指した方向は、確かにまだ探していない。
しかしそこは小さな岩が点在するだけの視界の開けた場所で、一見して隠れる所なんてありそうになかった。
「えー?ホントにぃ?あんなトコ、隠れる場所なんてないじゃん」
他の子たちも疑わしげな様子だ。
周囲の反応に、サクラはシュンと頭を下げる。
私はみんなの顔を見渡した。
「よし、行ってみよ。サクラがそう言うならそうなんでしょ」
サクラが、嬉しそうに私を見る。
みんなも、「いのちゃんがそう言うなら」と歩き始めた。
先程と同じように名前を呼びながら探す。
こうしてみると、ここも意外に死角が多い。
岩と岩の間に小さく縮こまっていれば見つからないかもしれない。
タクトがこっちに隠れたというのも、あながち間違いではないようだ。
しかし、これだけ呼んでるのに出てこないってことは、やっぱり帰っちゃったのかしら。
すると、別の場所を探していたサクラが大きな声を上げた。
「みんなー!タクトくん、いたよ!こっち!」
少し慌てた様子で手を振っている。
何かあった?