頂き物
□信じてくれるから
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「違うでしょ」
私はみんなを制止する。
え、とみんなが不思議そうな顔をした。
「タクトの居場所を見つけたのはサクラ。
タクトを助ける方法を考えたのもサクラ。
私は少し力を貸しただけで、タクトを助けたのはサクラよ」
遠慮がちに後ろのほうにいるサクラに視線を投げた。
すると、みんなもそれに気づいたようにサクラを振り返る。
岩を砕く話をしている時はあんなにしっかりしていたのに、今はみんなに見つめられて、ドギマギして小さくなっていた。
「そうだな」
タクトがぽりぽりと頭を掻く。
「サンキュー、サクラ。助かったよ」
片手をサクラのほうに差し出した。
サクラはしばらくあたふたしていたが、おっかなびっくりタクトの手を握った。
「お前、サクラに見つけてもらわなかったら今頃行方不明だもんな」
「ホントホント」
「サクラちゃんすごいね。よくあんなこと思いついたね」
「オレなんかそんな授業やったことも忘れてたよ」
みんながサクラを囲むようにして話しかける。
サクラも照れながら、ありがとうと笑った。
「サクラって結構細かいところ見てるのよね。
タクトが逃げた方向だって、私たち、自分が隠れるのに夢中で全然見てなかったじゃない?
それに、岩砕き。
サクラは授業しっかり聞いてるから、いざって時に実践できちんと生かせんのよ。
基本に忠実だから間違いもない。
あんた、やっぱすごいよ」
私はにっと笑ってサクラを見る。
サクラは本当に嬉しそうに私に笑い返した。
「いのちゃんのおかげだよ。いのちゃんが私のこと信じてくれたから」
サクラの笑顔に、私の胸が熱くなった。
「バカね、そんなの、あったり前じゃん!」
こうして、私たちは、サクラを褒め、タクトをバカにしながら帰路に着いた。
その日から少し、サクラは積極的になったような気がする。
――いのちゃんが私のこと信じてくれたから
――そんなの、当たり前でしょ。
あんたが、私のこと、信じてくれたんだから。
サクラが他の子と違ったのは、きちんと私を信じてくれることだ。
他の子たちは、私が何でもできると思ってて、少し面倒なことは私に任せておけばいいと思ってる。
ま、別にそれはそれでいいんだけどね。
けど、サクラは違う。
ちゃんと私を見て、私と向き合って、私の実力を認めてくれる。
信じてくれる。
あんたが私のいいところをたくさん見てくれるみたいに、あんたのいいところだって、いっぱいあるんだよ。
もっと自信持っていい。
だけど、それがどこかはこれ以上言わない。
いつか、自分自身で、気づけると思うから。