頂き物
□脳裏に蘇る一場面
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「パンク?」
「タイヤ、ペッチャンコだってばよ」
「おいおい…」
今日、シカマルの大学入試が一応の終わりをみた。
既に進路が決まっていたキバとナルトは、シカマルを迎えた後、久しぶりに部活に顔を出す。
開放的な気分で気持ちよく汗を流し、夕食を取った彼らは、自宅へ向かうべく自転車にまたがった。
が、走り出した途端、ナルトが大声を上げて立ち止まってしまったのだ。
彼の自転車の後輪の空気はぺしゃんこに潰れていた。
「ったく、どーすんだよ。バスも終わっちまってるぞ。つーか、終バスが九時台っておかしいだろ」
キバが不満を漏らす。
田舎のバスは一時間に数本、丸々二時間来ない時間帯もあるくらいだ。
この状況は、言わば田舎に住む彼らの宿命である。
「歩いて帰るしかねぇな、こりゃ」
シカマルはため息を吐いた。
「マジかよー」
「お前のせいだろーが!」
三人はぶつぶつ文句を言いながらも、自転車を引き、歩き出した。
自宅周辺まではおよそ五十分といったところである。
空気は肌を刺すように冷たい。
「はあー、久々のサッカーは楽しかったってばよ!」
白い息を夜空に燻らせ、ナルトは声を弾ませる。
「おう!二年の奴ら、かなり上手くなってたな!」
「ああ。杉浦のやつ、オレらがいた頃は下から数えた方が早かったが、急激に伸びたな」
「オレってば、あいつはやると思ってたってばよ!」
「あいつもサッカー一本で行くらしいからな。大学でまた会うかもな」
「そうか、キバはスポーツ推薦だったな」
「おうよ!大学でも暴れてやるぜー!」
シカマルは某有名大学志望、キバはスポーツ推薦でサッカーの実力校へ、ナルトは最近頭角を現したばかりの小さな新興企業に就職が決まっている。
三人はこれから、別々の道を歩いてゆく。