嘘つきピエロ
□泣き虫ピエロ
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ゆうちゃんがむかえにくるまで、あと2時間もある。
授業はいつも通りに終わって、ひろくんの手を上げる回数をいつも通りに数えて一日が終了。
「…っしょ、と」
先生に頼まれたプリント類を顔が隠れるまで積んで、廊下を歩く。部活に入ってないのは、わたしだけだからかな?
帰宅部も伊達に暇してないんだけど、ね。
風で飛ばないように気をつけて階段を下りる。
立海は、教室棟と管理棟に別れていて、教室棟が4階、管理棟が3階建。
そのうち職員室は教室棟の1階だから、どうせ階段使わないと降りることができないの。
鞄ももって、プリントも持って、見えない階段をよたよた下りて。
いつも雑用はわたしの仕事。
話すのが苦手で、おともだちもできない。そんなわたしは一人ぼっち。
雑用だって全部引き受けちゃうし、居残りだってなぜか私に回ってくる。……帰宅部だからなか?
3年生が始まってから1ヶ月たって、結局仲良くなれたのはひろくんだけ。クラスのみんなとは、やっと会話ができるくらい。
さみしくないし、もうなれたこと。
かなしくないし、もうなれたこと。
空気みたいな、毎日だから。
「……っわ、!」
バランスを崩して、階段の途中で足を滑らせる。
運動神経が抜群に悪いわたしは、体育はいつも見学。手を怪我したらピアノが演奏できないでしょ?
だから、幼稚園から走ったり体を使った運動は避けてきた。
「危ないっ!」
あぁ、落ちちゃう。ゆうちゃんに怒られる、と思った瞬間、ふわってなった。
正確には、抱っこ。
「…っー、…大丈夫!?」
見下ろす、………見上げる先には、青い髪の男の子。
尻もちをついた男の子の腕に、抱えられた状態…なんだけど周りには放り出された鞄と、彼の鞄と、ばらまかれたプリント類。
「……ぅ、…」
「え、と!…どこか怪我した?大丈夫!?」
困らせたくないのに、怪我もしてないのに、なんでか泣いちゃう。
あふれ出る涙はとめられなくて、目からたくさんこぼれてくる涙。
きっと困ったような顔をしているんだろうけど、もう止められないから、これは。
そう思っていたら、向こうから足音がして……
「…幸村?」
「どうしました幸村く、ん……………ひなさん!?」
ひろくんと、同じクラスの真田くん。
わたしは知らないうちに、ひろくんの腕の中へと飛び込んでいた――