嘘つきピエロ
□放課後とピエロ
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天気予報ははずれ。
お天気おねえさんが晴れって言ったから傘持ってこなかったのに、わたしが学校付いたとたんに降り出した。
ただ単にくるのが早いから、みんなはきっと持ってきてるんだろうな。
「はぁ、…」
五時限目の休み時間。六時限目の英語の準備をして、椅子の上に体育座りをして一息。
ゆうちゃんは今日用事あるらしいし、このままだと雨は降り続ける一方。
ぬれて帰るしかないか、怒られるけど仕方がない。
腕に巻いてある包帯を見てさらに溜息。
昨日階段から落ちた時うっかりねんざした腕。ひろくん達には何も言ってなかったけど、全治2週間らしい、骨折じゃなくてよかった。
「ひな、大丈夫?」
「ぁ、みゆちゃん」
ひとつ前の席の江ノ原美由(えのはらみゆ)ちゃん。
「腕怪我したの?」
「はい、でも大丈夫ですよ」
「あんたピアニストなんだから気をつけなさいよ?なにか頼まれたら言ってね、私やるから」
「ありがとうございます」
……みんなどうして頭をなでるのでしょう。
みゆちゃんが手を離したち同時に、先生が入ってきてひろくんもやってきた。
英語は好きなんだけど、六時限目にあたるとちょっとブルーだなあ…
起立、礼。学級委員の合図で、みんなが帰りだす。
空模様も最悪状態。大雨で気温も低い。
こんな状態でぬれて帰れば、風邪引く可能性100%だろうな。
そんなことを思いながら席を立てば、クラス1のお嬢様、前納宮さんに呼び止められる。
「天津さん」
「…なん、でしょう?」
縦ロールの前納宮(まえのみや)さん。そして今日の日直は前納宮さん。さらにテニス部大好き前納宮さん。
………………………………………おまけにお嬢様な前納宮さん。
後ろにもお友達の舘谷(たてや)さんや井上(いのうえ)さんが護衛済み。逃げようにも道はなし。
「今日ね、わたし用事があるのよ。だから日直変わってくれない?」
「天津さんどうせ暇でしょ?」
「よろしいかしら?」
日直の仕事は、机整頓に日誌書き、生徒が全員出た後の掃除と消灯。
断れないし、いつものこと。
「いいです、よ」
「助かるわ。じゃあこれ、日誌ね」
置いてわたしのもとを去る前納宮さん御一行。
…すごく香水がきついの。
「……はぁ、またですか」
仕方がないこと、断れないから。
さあやろう、日誌を開こうとしたら、教室に入ってくるたくさんの足音がした。
「せんぱーい!今日帰りどっかよりましょうよー」
「暇だからファミレスいこうぜぃ!」
「雨降りの中か?」
「俺はいいけど?用事ないし」
テニスバックを担いで入ってくるテニス部のみなさん。ひろくんと真田くんだけは鞄を取りにきたみたい。
「…ひなさんが何故日直を?今日は前納宮さんでは?」
「さっき頼まれたんです、用事があるからって」
お忙しいんですね、と言った時。
「前納宮だったら普通に帰ってたよぃ」
………またですか。
早く帰りたいから頼まれごと、これもいつものことだけれど。
「天津、そんなものやらなくていいぞ」
「そんなの、だめですよ真田くん」
「だが…」
「じゃあ、みんなでやらない?ひなちゃんだけだと大変じゃないか」
幸村くんの一言で、テニス部のみなさんと日直の仕事をするのことになりました。
そういえば、名前聞いてない…
(ったく、前納宮最悪だぜぃ)
(よりによって天津に頼むとは)
(ひなちゃんが可哀想だよ)