嘘つきピエロ

□外食とピエロ
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ただいまの時刻6時10分。


夕食に丁度いい時間。
私はテニス部のみなさんとファミレスに来ています。
 

「俺オムライスー!」
 
「じゃあ俺もオムライスにするッス!」
 
「はいはい、2人ともうるさいからちょっと黙ろうか」
 

大人数だからファミリー席。
それでもたりなかったからテーブルをくっつけて9人席に。
 

ジャ 丸 切 仁
―――――――――
真 比 私 幸 柳
 

席順はこんな感じ。
 
わたしはひろくんと幸村くんに挟まれて、前には切原くんと丸井くん。
すでに賑やかすぎて話が通じない、……いや賑やかを通りすぎてうるさいです。
 

「ひなちゃん、何にする?」
 
「…ぇと、」
 

大きな男の子たちに囲まれて、ひとつぼこっとへこみ部分が私。
背もたれの椅子にも頭がちょこっとでるくらい。
 
みんな普通に見るメニューも、わたしにしたら大きいから机に置かないと読めない状態。
 

「んー……」
 

ぺらぺらとメニューをめくる私を直視する切原くん。
 

「…ぁの、何か用ですか?」
 
「あ、いや。先輩ちいさいなって」
 

なんだそんなことですか。
 
身長は全部ゆうちゃんにあげちゃったみたい。
おまけに体も弱いから、小食なうえに体力はゼロ。そしておちびちゃん。
 

「小さくてすみませんね」
 
「な、怒んないでくださいって!…ぁ、ほら!飴あげますから!」
 
ちょっとむすっとした声でいえば、あわてて謝る切原くん。
だから私はお菓子で釣れないだって、と思うけどお菓子には弱い私。
 
「ひなちゃんは小さいほうが可愛いよ?」
 
「お人形さんみたいですしね」
 
「どっちかっていうとうさぎじゃね?」
 
「小動物じゃな」
 
勝手に私の話で盛り上がる8名。
おちびちゃんだとこんなにもたとえがあがって嬉しいのか悲しいのか。
 
「ぁの、」

「ん?」
 
幸村くんの袖を引っ張って、メニューが決まったと伝える。
 
「わたし、かぼちゃグラタンがいいです」
 
「了解、…頼むものまでかわいいんだから」
 
ぽんぽん、と頭を撫でてくれる幸村くん。
そのあと柳くんが全部まとめて注文してくれた。
 

「先輩って身長何cmッスか?」
 
「………150cm」
 
「嘘だー。ぜってぇない、150もない!」
 

何だか悔しくなったからひろくんに抱きついてみた。
だけどそれが裏目にでたらしい。言ってほしくない身長の情報を、ひろくんに漏らされてしまった。
 

「ひなさんは143cmですよね」
 
「ちっせー」
 
「う、うるさいです!…遠近法ですもん」
 

遠近法で小さく見えるんです。
ひろくんもひろくんでなんで教えるんでしょう。
 
みんなちっちゃいとか口そろえて言い始めるし、柳くんなんてノートに書き込むし。
 
「おちびですみませんね」
 
そういったあと、店員さんが次々に注文した料理を運んできた。
 

私以外、定食やすごく多いお料理。
わたしだけすごく小さなかぼちゃグラタンで、わたしだけすごく背の低い女の子。
 
いろんな意味で浮きまくっている気がする。
 

「うっめ、やっぱここが一番だわ」
 

さすが男の子。
食べる量も多ければ、食べる速さも全然違う。
 
ゆうちゃんは男の子の中でも小食で、食べるスピードものんびり。おまけに普通体系よりも細身の男の子だから、草食系代表なのかもしれない。
 

「天津って、小食なんだな」
 
和食定食をゆっくり食べるジャッカルくんに、ふとつぶやかれた。
ブラジル出身のジャッカルくん。洋食よりも和食が好みらしくって。…今度作ってあげようかな?
 
「そうです、か?」
 
自分的には普通だと思うんだけど。


そもそも男の子と女の子を比べるから駄目なんですよ、きっと。
 
 
「普通の女性より食べる量は少ないですね」
 
「俺の妹はもっと食べるけどなあ」
 

胃が小さいだけなのですよ。すみませんね。
 














その後もたくさんのおはなしをして、テニス部のみなさんと仲良くなれました。
――――――――楽しい時間はあっというまで。
 

(まさか天津と家が近所とはびっくりナリ)
(私もびっくりです)
(俺の祖父と知り合いだったとは…)
(真田おじさまとはよくケーキを食べに行きますよ)
 
 

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