嘘つきピエロ

□食材とピエロ
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楽しい時間はあっというまにすぎて、お開きの時間に。

だけれど、この短時間でテニス部のみなさんのいろんなことが少しずつわかってきました。
たとえば、真田くんのおじ様がまさかパパの知り合いの真田おじさまとは知らなかったし、ご近所さんの仁王さん家があの仁王くんのお家だとは分からなかったし。


「じゃあ俺たちこっちだから」
 
「さよならっすひな先輩、と先輩たち!」
 
「また明日」
 

私たちとは反対方向へ帰る切原くんにジャッカルくん、それと丸井くん。
雨もすっかりやんで、あたりは真っ暗に。

「なんじゃ赤也。俺らはついでか」
 
「ひな先輩メインッス!」
 

まあ嬉しいこと。


「赤也はやくしろよー!」
 

遠くで呼ぶ丸井くんに切原くんがあわてて走っていく。

夜なだけあって、人通りも多くなってきた街中。
みんなについて行くだけでも精一杯なのに、こんなのじゃ人ごみに埋もれちゃいそう。
 

「では、わたしは電車なので」
 
「俺もだ」
 
「俺はよるところがあるので失礼する」
 

ひろくんと柳くんは電車。真田くんとは用事があるらしいからここでさようなら。
結局一緒に帰るのは、幸村くんと仁王くん。
 

……わたしお買いものしたいんだけどなあ。
 
 
「さようならです」
 
「また明日ね」
 
「またナリ」
 

足の長い2人に、人ごみの多い道。歩くのが早い2人に、歩くのが遅い私。



……不釣り合いにもほどがある。
 
 
 
どんどん置いていかれる私。

どんどん距離があく私。
 


「……だよね、やっぱり。ひなちゃんはどうおもう……、あれ?」
 
「天津?」
 
「どこだろう」
 
「…後ろにいるナリ」
 

こちらを向いている2人をあわてて追いかける。
だけれど、スーツ姿のおじさんたちに道をふさがれてなかなか前に進めない。
 
やっとのことで進めれば、きっと迷惑がっているであろう2人の顔が……
 

いや、違った。
 

そこには、笑顔で待ってくれている2人の顔があった。
 

「ひなちゃん、大丈夫?」
 
「このままじゃ迷子ナリ。手、つなぐか?」
 

仁王くんの言葉で、2人の間に入って手をつなぐことに。
まるでお兄ちゃんと妹、……パパとママ?
 
どっちにしろ、このままだと明日の食材を買いに行けない。
 

「ぁの、」
 
「ピヨ?」
 
「…スーパーに、よりたいんですけど、いいです、か?」
 
「いいよ、もっと早く言ってくれたらデパートでもよったのに」
 

優しい2人の言葉でスーパーに無事よることができました。





………それにしても、あしたの朝食なににしましょう。
 

(天津は何を買うんじゃ?)
(明日の朝食、です)
(まるでお母さんナリ)
 
 

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