嘘つきピエロ

□食材とピエロ2
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というわけで、スーパーに来ています。
 
仁王くんにカートを押してもらって、わたしと幸村くんで食材探し。
なんだか家族みたい、ちょっと楽しいです。
 

「何にしましょう…」
 

普通に和食にするか、それとも洋食にするのか。
ゆうちゃんにメールでききたいところだけど、2人に迷惑をかけてしまう。
 

「天津は、親はおらんのか?」
 
「ぇ?」
 
「…いや、朝食の材料買うなんて1人暮らしでもしとるんかと思って」
 

まあそう思うでしょう。
 
朝食の材料買うなんて、1人暮らしか親がいないか。
どっちかにしか当てはまらないからね。
 

「パパとママは海外に赴任中、なんです」
 
「弟さんと2人なんだっけ?」
 
「はい、家事は日替わり制なんです」
 

あ、たまごきらしてた。そう思ったら、ふいに仁王くんの手が頭にやってきた。
 

「困ったら何でも言うなり、俺も幸村も、力になるぜよ」
 
「うん」
 

とっても優しい言葉。
 
断ることが怖くて、頼ることが怖くて、嫌われるのが怖くて。
そんな私がもらって一番うれしい言葉。
 
おともだちが1日にこんなにたくさんできて、はじめてこんなにたくさんのおともだちと外食に出かけて。
 


ママとパパが帰ってきたときくらい、素敵な気持ち。
 
 
 
「ありがと、う…ございます」
 
「どういたしまして」
 
「どういたしましてナリ」

 

笑ってって言ってくれるその姿が、今の私に何よりの力をくれる気がする。
すこしだけ、人を信じることができた。
 
この人たちなら、きっと大丈夫。
 
 

その後もお魚やたまご、野菜、飲料類を買った。
もちろん、ゆうちゃんが大好きなブルーベリーチーズも。

 
「あとは…」


丸井くんと切原くんが好きそうなお菓子を探しに、お菓子コーナーへ。
何が好きなんでしょう…
 

「ぁの、切原くんと丸井くんは、どんなお菓子が好きですか?」
 
「丸井?…んー、俺はよくしらないから。あ、仁王」

「ピヨ?」


ラムネを見ていた仁王くん。
……ラムネ、好きなのかな?
 
こっちへ来て、ガムや甘いものが好きだと教えてもらった。
丸井くんにはガムとチョコレート、切原くんにはチョコレートとポッキーを。
 
おまけに、幸村くんに私のお気に入りなクッキーと、仁王くんにラムネを。
 




ふと携帯の時刻を見れば、もう9時前。急いでレジへ向かって会計を済ませ、スーパーを後にした。



「あの、…付き合ってもらってありがとうございました。お礼に、これ」
 

先ほど買ったクッキーとラムネのお菓子を差し出す。


「いいの?」
 
「はい、お礼です。幸村くんのクッキー、すごくお気に入りなんです。…仁王くんのは、ずっと見ていらしたので」
 
「……ありがとうナリ」
 
「ありがとう。じゃあ、俺はこっちだから。仁王、ちゃんと送ってあげなよ?」
 
「心配無用ぜよ」
 
「じゃあね、ひなちゃん、仁王」
 
「さようならです」
 
「またナリ」
 

幸村くんと別れ、家のある住宅街へと向かう。

少し肌寒くなり、ほとんどの家に明かりがともった9時すぎ。坂をのぼり、家を目指していた。
重たくなった買い物袋を両手で持っていたら、仁王くんが手を差し出してくれる。
 

「……貸しんしゃい」
 
「…ぇ?」
 
「家まで持つぜよ、もう少しじゃろ?」
 
「で、も」
 
「いいから、早くしないと弟くんが待ってるナリ」
 

言われるままに、手を握ってくれて、買い物袋を持ってくれた。
 

「仁王、くん」
 
「雅治でいいぜよ」
 
「ぇ、と…雅治くん」
 
「なん?」
 
「ありが、とう」
 
「………ピヨ」
 

黙って手をひいてくれる雅治くん。
…雅治くんは、お兄ちゃんみたいです。
 

「ぁ、ここです」
 
「真っ暗ナリ」
 
「まだ帰ってないんですね」
 

鍵を鞄から出して、玄関を開ける。
 

「今日はありがとうございました」
 
「大丈夫ナリ。また明日」
 
「はい、さようならです」
 
「プリ」
 

あのプリとかピヨはなんなのだろう。
そう疑問に思った後、重い荷物を持って家へと入った。
 
 
 
 
 
 
 
(ただいまー)
(ゆうちゃんお帰り!)
(ごめんね、用事が長引いちゃって)
(大丈夫ですよ、はいこれ。ブルーベリーチーズ)
(わああ!ありがとうっ)
 
  

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