嘘つきピエロ
□報告とピエロ
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その日の夜。
マネージャーになった、ということをゆうちゃんに言わないといけない日。
すごくドキドキしてます、今。
「ひなちゃん、ご飯出来たよ」
「はいです」
机の上に並べられたゆうちゃん作のお夕飯。今日はミートソースのスパゲティーらしく。
私が小食なのを気遣って、量はいつも少なめ。
でも、ゆうちゃんのお料理はすごくおいしいのです。
「そういえば、俺部活入ったんだ」
それ一口。
スパゲティーを口へ運ぼうと思ったら、私が言おうと思っていたことをゆうちゃんが言っていた。
今まで帰宅部だったわたしが今日部活に入り、今まで委員会一筋だったゆうちゃんが部活に入る。
今後気にしてた帰りの時間とか一切気にしなくてよくなって少し気が楽になる。
「それはよかったですね!何部なのですか?」
「んと、テニス部なんだけどね」
「…っく!」
「わあ!ひなちゃん大丈夫?お水お水っ」
まさかのテニス部。
びっくりしてのどにつまりかけたじゃないですか。
こっちへきて水を差しだし背をさすってくれるゆうちゃん。
たしかにゆうちゃんは運動神経抜群で球技も陸上も体操も水泳もなんでもできる子。
そりゃあ、わたしのぶんまで持っていっちゃったからね。
ゆうちゃんならのみ込みもはやいから、すぐレギュラーでもとれるんじゃないでしょうか。
「……ふぅ。ゆうちゃん、もう大丈夫です。おはなしのつづき、聞かせてください」
「ほんとう?ならよかった。…あ、それでね!テニス部に入ったんだけど、俺マネージャーなんだ」
「…何故マネージャー?」
「いやね、本当は部員で入ってって頼まれたんだけど、部員になるとひなちゃんと一緒に帰れないでしょ?だからマネージャーにしてもらったの!丁度いなかったみたいだしね」
なんだ、そんなこと。
それならわたしも一緒なのに、ゆうちゃんは本当に優しい子。
自慢の弟で、自慢の家族。
「そんな、気遣わなくていいのに。テニスしたいでしょう?」
「あはは、大丈夫だって!今はレギュラーたりてるし、それにマネージャーいたほうが楽でしょ?
だから、ひなちゃんと一緒に帰れる日が少なくなるけど…」
「あの、ゆうちゃん」
――わたしもテニス部のマネージャーになったんです
「…おめでとう!」
最初びっくりした顔をしたけど、すぐ笑顔になるゆうちゃん。
私も、おめでとうと言ってくれた時びっくりした。
だけれど、すこし嬉しかった。
ゆうちゃんと同じ部活で、ゆうちゃんと同じ役柄で。
ずっと、一緒にいれるから。
「ありが、とう」
「なら、一緒に帰れるね!俺のところ、立海よりも早く部活終わるから安心、ふふ」
「…そうですねっ」
いつもより、ご飯がおいしく感じれました。
明日からが楽しみです。
(部活までおんなじって…双子みたいだね!)
(そうですねっ)
(でもひなちゃん、体だけには気をつけてよ?)
(…大丈夫です)