嘘つきピエロ

□仕事とピエロ
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ポーン、

ポーン、
 


昨日あったいきなりのテニス部マネージャー勧誘。

今日から部活参加で、今は柳くんからその仕事の引き継ぎ中。
………それにしても、フェンス越しの女の子たちの視線が痛いです。明日が命日かもしれない。
 

「……で終わりだ。………天津、聞いているか?」
 
「あ、はい。わかりました」
 
「ではさっそく取り掛かってくれ。わからないことがあったら聞いてもらってかまわないからな」
 
「はいです」
 

ぽんぽん、と頭を撫でてさっていく柳くん。
柳くんからはいつも石鹸の香りがするのです、お風呂上がりの気分。
 

「やりますか」
 

気合を入れてさあドリンク。
 
はたからみたらいつもと変わらないだろうけど、気持ちはやる気十分です。
なんだってゆうちゃんもマネージャさんなんだもの、それに、みなさんの役にも立てるから。
 
冷蔵庫からレモンや粉など取り出して作成開始。


部員は全員で40名。


柳くんからは、部員は全員持参だから作るのは20前後でかまわない、と言われたけれど…
せっかくペットボトルが50個あるんだし、40全部作ってもいいのかな?足りなくなったら可哀想でしょ?
 
必要なものはみんな持参してるらしいんだけど、部室使用は一様部員全員、でも希望者だけ使用してるって感じ。
それなりに広い部室に、スポーツバッグはちらほらとした置いてない。ロッカーもレギュラー人数分だし…

 
結論:レギュラーになればなんでもできる

 
これくらいしかわからないのが今の現状です。
タオルもたくさんおいてあるし、立海って結構なんでもそろえてくれるんですね。
 

「……お洗濯っていうのは、こちらの山でしょうか」
 

タオルもドリンクも用意できたので、さて洗濯へ。
 
と思い入口よこへ目をやったら、籠2つに山盛りに投げ捨ててあるユニホームとタオル。
さすが男の子、汚れたものは放りだすんですね。……綺麗に出してとお願いしましょうか。
 



ガチャ、
 



部室の扉をあけて、山盛りの洗濯ものを1つずつもって出る。
洗濯機はご丁寧に2つ設置してあって、脱水つきだから、まあハイテク!という親切な立海。
 

とても便利です。
 

「なー、天津」
 
「なんでしょう?」


洗剤を入れ終わって、洗濯機の調子をみていたとき。
ふいに丸井くんが話しかけてきました。

 
「怪我しちまったんだけどよぃ、絆創膏ねえ?」
 
「ちょっとまってください、すぐ行きます」
 
「おーう」
 

洗濯かごを持っていそいで部室へ向かう。

椅子へ座っている丸井くんの膝からは、転んだであろう傷が。
救急箱をもって前に座る。
 

「転んだんですか?」
 
「うん、まあな」
 
「…ちょっとしみますよ」
 
「大丈夫だってなれて……いってえ!」
 

水で洗い流した後、消毒液を傷口にぬる。
大丈夫大丈夫と平気な顔で言ってるけど、全然大丈夫じゃないですか。
 
痛いと叫びながらこぶしを握る丸井くん。子供みたいです。
 

「結構傷広いですから、今日はもう走り回らないでください」
 
「えー」
 
「えーじゃないです、ガーゼで包帯巻いておきます。明日からは取ってもらっていいですよ」
 
「おう、なんか保険医みたい」
 
「お医者様に、なりたいときもあってお勉強してたんです」
 

ゆうちゃんが怪我したとき、ママとパパが怪我したとき。
すぐ手当てしてあげれるように、お医者さんになりたくって小学生のときから医学のお勉強をした。
 
その結果もあって成績は向上。

だけれど、自分に持病があるとわかって断念。
でも、その勉強が今ここで役に立ってなんだか得した気分。
 

「へー、じゃあ俺素振りするわ」
 
「そうしてください、……あと」
 
「ん?」
 
「……足首、ひねってますよね」
 

靴を脱いでもらった時、足首をかばうようなしぐさ。
ひねった時かねんざの時か、または痛みを感じる時か。
 
丸井くんは、すごくびっくりした顔で私を見た。
 
 
「なんで、わかったんだよぃ」
 
「…足首、かばっているでしょう。ばればれです。今日はもう、帰ってお医者様に診てもらってください」
 
「だけど、」
 
「テニスが好きなら、自分の体も大切にしてあげてください。…少しの休憩も、テニスプレイヤーには必要です」
 

少し元気がなさそうだったけれど、私が言った言葉に笑顔で答えてくれた。
 

「……おう、サンキュひな」
 
「……ぇ」
 
「俺のこともブン太でいいぜぃ」
 
「…はい、ブン太くん」
 

お菓子が大好きなブン太くん、ちょっと子供っぽいブン太くん。
 



意外な一面が見れました。
 












あ、ドリンクもっていかなきゃ!
 

(あれ、丸井帰るの?)
(おぅ、ちょっと病院行ってくる)
(そんなにひどい怪我だった?)
(………まあな)
 
 

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