嘘つきピエロ

□手紙とピエロ
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マネージャー生活にもなり、今まではさほど気にならなかった日差しも強くなってきたころ。
朝練のない月曜日は、なんだか落ち着かないくらいテニス部が生活の一部となっていた。
 

「あ、ひなじゃん。おはよ」
 
「ブン太くん、おはようございます」
 

日傘をたたんで下駄箱へ向かうと、ブン太くんに声をかけられた。
肩にはテニスバッグ、お口の中にはガム。そして甘い匂い。

彼からお菓子の匂いがしない日なんて一度もない、……気がする。


「日傘?」
 
「ぁ、はい。日差しが強くなったので」

「ふーん、女子っていそがしいな」
 

そういうわけじゃないんだけど、ね。

日焼け止めだけで十分紫外線を防げる普通の人の肌と、紫外線に長時間あたると体調を崩す私とでは春から秋にかけて外に出るのは大変なこと。
おまけに片頭痛や喘息や発作とかその他いろいろと持病で持ってきちゃってるから、本当ならばマネージャーなんてできないんだけど。
というか、学校へ普通に歩いてきてるのが奇跡ってくらいかな?
 

「一緒に教室あがろうぜぃ?」
 
「はいですっ」
 

待っていてくれるブン太くんをしり目に、自分の下駄箱を開ける。
すると、スリッパの間に半分に切れたルーズリーフが二つ折りにして挟まれていた。
 

手に取ってひらくと、“ 死ね ”の2文字。


「………はぁ、」
 

ついに来ましたか。最近よくでるようになったため息。
それに気付いたのか、ブン太くんが私に近寄る。
 

「どうした?ひな」
 
「ぃ、え。なんでもないです」
 
「そ、ならはやくあがろうぜぃ」
 

せかすブン太くんに手をひかれ、まだはいてないスリッパを何とか引きずりながら横へ並ぶ。
 

「それでさあ、…――」


言ったほうが良い?言わなきゃだめ?
でも、言ったら迷惑になる?

いろんな考えと感情が入り混じって、ブン太くんの話しが私の耳を素通りする。
言ったら、ほんとうにファンクラブの人から守ってくれるだろうか?放っておくことなどないだろうか?
………邪魔に、ならないだろうか?
 




わたしは大丈夫、1人でも大丈夫。
 



まだ手紙だけ。
まだ、まだ大丈夫――









(ひなに言われた通り病院いったぜぃ)
(どうでした?)
(今週は様子見でテニスすることにした)
(おかしくなったら、言ってくださいね)
(…おう、サンキュ)
 
 

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