嘘つきピエロ
□動き出す人とピエロ
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半分に折られたルーズリーフを、胸ポケットから取り出して再度確認する。
殴り書きで書かれた“ 死ね ”の二文字。誰の字かはわからないけど、明らかにファンクラブの仕業だとおもう。
マネージャーになってからしばらくたち、何もなくてある意味不気味になったが、いつかは来ると思っていたこと。
朝の一件からそれ以降は何事もなく部活の時間を迎えることができた。
今日から一気に、ということではなく今日から徐々に始まっていくんだろうなあ…。
「ひなさん、部活に行きましょうか」
「はいです」
ひろくんと真田くんと一緒に、部活へ向かう。
マネージャーになってからはいつもこの2人+幸村くんと行くようになった。
私の部活スタイルは、つい最近もらったレギュラージャージ。
長袖に長ズボンで暑くないのと聞かれるけれど、寒がりな私にとって別にどうってことない。
ただ、私が小さいせいかぴったりのサイズがなく若干大きいけど。
今のところ通院には支障が出てなくて、部活を休むことなく通えてる。
もちろんピアノの時間もとれてるし、それに今はコンクールに向けて大事な時期。今後部活度も忙しくなるから、多少の休みは出てくる。
いろんなことを今秘密にしてるから、いつかは話さないといけない。でも、そのタイミングがつかめない。
………私の、悪い癖。
「っ、」
肩に強い衝撃。思わず、横に倒れそうになる。
「大丈夫?ひな」
「…大丈夫です、」
後ろを振り返れば、前納宮さんがこっちを睨んでいた。
舘谷さんに井上さん、そのほか数人の女の子もこっちを見ている。
「ひなさん、内側を歩かれたほうがいいですよ」
「そうだね」
ひろくんの一言で、内側へ移動する。
「ひな、何かあったらすぐ言って。大事なひなになにかあったら、俺たちいやだから」
「………はい、です」
後ろを振り返ることなく、真剣な目で私に話しかけてくれた精市くん。
だけど、この紙切れを見せることはできなかった。
動き出した人と、感ずいた人。
この先の悲劇を予想する人など、まだ誰もいなかった。
もちろん、わたしもわからない。