嘘つきピエロ
□異変とピエロ
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「ひなちゃん、やっぱり休んだほうがいいよ」
「だいじょうぶ、っけほ…です」
「……でも、」
最近日光にあたりっぱなしだったのか、朝から喘息が止まりません。
制服を着て玄関を出ようとするのだけれど、ゆうちゃんにとめられてしまい。
それでも行こうとすわたしは頑固者でしょうか?
「っつ、…げほっ、けほ、」
薬は常に所持してあるし、日傘も帽子もきちんと持っているのできっと大丈夫。
朝ごはんは食べれなかったけど、軽い喘息だから大丈夫。
それに、マネージャーがいないとみんなが大変だし。
こんなところをお医者さんに見られたら間違いなく止められるし、ママやパパが知ったらあわてて帰国すると思う。
ゆうちゃんだってあわててる、というか休ませようと必死みたいだし…
「ひなちゃん…」
「大丈夫ですからっけほ、ね?っけほ、…っげほ」
「………ぅん」
折れてくれたゆうちゃん。
本当なら、わたしが折れるほうなんだけどね。
「体調悪くなったらすぐ電話してね?迎えに行くからね?あと、保健室行くんだよ?」
「はいっけほ、っけほ!…わかってますっげほ!」
まるで保護者みたいなゆうちゃん。
パパ達が海外へ赴任してからは、わたしがゆうちゃんの保護者だった。
ちょっとぽーっとしてて、わすれっぽゆうちゃんだから。…といっても、わたしだって人見知り激しんだけどね。
いつのまにかわたしより大きくなったゆうちゃんは、自分のことよりわたしのことを心配するようになって。
シスコンにブラコン、どっちもどっち。
みんなからは理想の兄弟って言われるけど、私からしたら当たり前なのかもしれない。
ゆうちゃん依存症、………かな?
「ひなちゃん、運動しちゃだめだよ?」
「だいじょうぶっげほ、げほ!…ですっけほ」
なかなか手を放してくれないゆうちゃんに笑いかければ、苦笑いだったけど話してくれた。
過保護なのは、ゆうちゃんなのかも。
心の中でそっと笑って、背をむけた。
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「……っけほ、げほっ!……おし、ぴん?」
スリッパに、おしぴんで“ 死ね ”の文字。
彼女らは死ねという文字が好きなのでしょうか。
学校用のスリッパに、感謝した朝でした。
(っけほ、げほっ!)
(ひなさん、風邪ですか?)
(いっえ、けほっ…だいじょうぶですっげほ)