嘘つきピエロ

□病院とピエロ
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今日も、カッター以外何もなく授業を終えれた。
そのかわり、ひさしぶりに長く続いて朝よりひどくなった喘息。
 

本当は明後日に控えてる病院も、今日行っておかないと明日はひどくなる可能性も。
 




………と考え付いたときには時遅し。



『ひなちゃん、今日病院行くからむかえに行くね』




ゆうちゃんからメールが入ってたので、今精市くんのところにむかってます。
変に心配される可能性あるなあ、…うん。
 

「けほ、っげほ!……ぇ、と」
 

人に聞くなんてことできない私は、入口から精一杯背伸びして精市くんを探しました。
青いくねくねしたヘアバンの精市くんは一目でわかるんだけど…。
背の高くて、女の子に囲まれてて、すごくきれいで……
 

「すごくきれいで?」
 
「すてきな精市く………ぇ?」
 

お口が勝手に動いてたみたい。
うしろを振り向くと、笑顔の精市くんがこっちを見てました。

こ、怖いなんて言わない……!
 

「ぇ、と…あの……っけほ、げほ!」
 
「ちょ、大丈夫ひな?」

「げほ、っげほ!…大丈夫です、っけほ」
 

一瞬咳のことを忘れると、あとから一気にくるんですね。
 

しゃべるのを忘れて喘息がコンコンと。
いろんな意味で心配される人になってるとおもう、今の私。
 


「今日、部活休みます。…っけほ、げほ!」
 
「…うん、風邪悪化したら駄目だからね。昇降口まで送ろうか?」
 
「いえ、大丈夫ですっげほ、けほっ!」
 

これ以上いるのもしゃべるのもつらいので。
 
一方的に切り上げて一方的にその場を立ち去ります。
精市くん心配そうな顔してたけど、ごめんなさい。早く行かないとゆうちゃんが待ってる。
 

かかりつけの病院は神奈川私立中央病院。
意外と有名で、全国からいろんな患者さんが来てるところ。
 
もちろん私も赤ちゃんの時から行っていて、何度も何度も入退院しました。
 

注射とかいたいのは大嫌いだけど。
 


「ゆうちゃんっ!…げほっ」
 
「ひなちゃんっ!」
 

昇降口を出たところですぐ待っていてくれたゆうちゃん。
制服が違うから少し浮いてるけど、というかゆうちゃんはものすごくかっこいいから浮きまくりなんだけど。

……あれ、ブラコン?
 

「ひなちゃん、やっぱり病院に行かないと」
 
「…ぅ、んっけほ、げほげほっ!」
 
「………ちょっとやばいかもね。急ごっ!!」
 






ゆうちゃんに手をひかれて、早足で学校を出ました。
テニスコートの前を通った時、精市くんやひろくん、レギュラーのみんなの前をすれ違いました。
 

丁度、私の手に血が落ちた時。
 









(……部長、今の)
(…………血?)
(ひなの、…口から)
 

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