嘘つきピエロ

□思い出とピエロ
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やっぱり発症したわけで。
やっぱり入院するわけで。
 



マネージャーを始めてから負担が大きすぎたのか無理しすぎたのか。
いくら紫外線に当たらないようにしていてもやっぱり全部表に出ちゃうみたい。
 



病院食も、点滴も、病室も。
全部全部、ひさしぶりです。

 
ゆうちゃんは学校、ママ達は一度家に帰宅。



今日から一週間寂しい病院生活が始まるわけで。
でも、わたし専用っていったら変だけどちゃんとアップライトピアノを置いてくれてるの、忍足先生が。
 

ピアノも体も心配だけど、やっぱり一番心配なのは……



―――テニス部



一週間も無断欠席なんて不信に思われるし、どうせ学校は生徒たちに内緒にしてるだろうし。 
悩むことが多すぎて大変だわ。
 






コンコン、
 






煮詰まった頭を整理していると、ノック音が響いた。
 


「どうぞ、」


ゆっくり開いたドアから見えたのは……









「ひな、ひさしぶり」
 





大好きな、大好きな、懐かしい幼馴染。
久しぶりにみた彼は、ちょっと背が高くなって大人になってました。




「……ゆ、うくん?」

「せやで、ひなの大好きなゆうくんや」

「…うんっ、おひさしぶりなのですっ!」
 


なんだか嬉しくなって笑顔になっちゃう。
ゆうくんは、大きな人形とわたしの大好きなクッキーをくれた。
 


「大丈夫か?ひな。おとんが昨日電話してきてん。
心配になって来たったわ、あとこれお見舞いのぶんな」
 
「わあっ!ありがとうですっ」
 
「どういたしまして」

「学校は大丈夫なんですか?」

「んー、跡部には作り話や。
おかんが倒れてしまってん、大阪帰ってくるわって」
 
「ゆうちゃんばれちゃいますよ、ふふっ」

「ひなのことは秘密やさかい、どないしよかー」

「どないしよかー」

「…ぶっ」



ゆうちゃんは前々変わってなかった。
 

ただ、少しだけわたしより大人になってる気がした。
………また、置いていかれるのかな?




でも、それぐらいが丁度いいのかもしれない。





***





それからしばらく話しこんでいると、




ダダダダダダッ



「ひなちゃんっ…!はぁはぁ」



「お?/ひぅっ」



ものすごい走る音とものすごい勢いで開くドア。
びっくりしてみたら、ゆうくんが息を切らして立っていました。
 






(ゆう、くん?)
(雄二、どないしたんや)
(…………(フルフルフルフル))
 

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