嘘つきピエロ

□嘘つきピエロ
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「ひなちゃん、いこっか」

 
優しく笑って、わたしの手をとるゆうちゃん。小さなわたしの手は、おおきなゆうちゃんの手にすっぽりはいる。
毎朝おんなじようにご飯を食べて、同じ時間に家をでて、同じ道を歩く。
 

年子なわたしとゆうちゃんは、いつも一緒。

保育園へいくのも、小学校へ行くのも。ごはんだって、お風呂だって、遊ぶのだって。いつもいつも、一緒だった。
今は学校がちがうけど、毎朝、帰る時も一緒。
 
おともだちは変っていうけど、これがわたしの当たり前。双子じゃないけど、双子みたいなもの。
 

「ゆうちゃん、今日は何時ですか?」
「んー、5時くらいかなあ?委員会があるんだよね」

 
手をつないで歩く通学路。
よく恋人にまちがえられるし、わたしなんか小学生に間違えられる。わたしがお姉ちゃんで、ゆうちゃんが弟なのに。
 

「じゃあ、近くにきたらお電話くださいね」
「うん、ケーキ屋さんよって帰ろうか」
「…はいです!」
 

ばいばい、と別れて手をふるわたし。
背の低い私は、すぐ人ごみに埋もれてしまった。だれもわからない、だれも気付いてくれない。

 
今日もまた、空気みたいな生活。
 
 










「ひなさん、おはようございます」

 
わたしの席は、窓際の一番うしろ。みんな背が高いからもちろん見えないし、手をあげても気付かれない。
自分の席で譜読みをしてると、隣の席の比呂士くんがやってきた。

 
「おはようございます、ひろくん」


大きくて、優しいひろくん。パパみたいな、お兄ちゃんみたいな、物知りなひろくん。
鞄を置いて席に座ると、本を取り出して読み始めた。
 

「ひろくん、今日のご本はなんですか?」

 
分厚い本をいつもよんでいるひろくん。


「今日はアガサ・クリスティのアクロイド殺しです。…ひなさんのは、あたらしい楽譜ですか?」
 
「はい、今度のコンクールで演奏するんです。」
 
「完成したら、是非聞かせてください」

 
もちろんです、楽しみにしてます、そんな会話をしながら、HRをむかえた。
 
 
 
 
 
 
 
 
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