嘘つきピエロ
□出会いとピエロ
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「…ぅ、っひぇ…っ…」
ずっと頭を撫でてくれるひろくん。大きな手は、すごく温かいの。
私が小さいからしゃがんでくれて、パパみたい。
すごく、優しい手。
「俺の受け止めようが悪かったかな?怪我してない、その子」
「見たところ大丈夫なようですけど…、ひなさん、お怪我はないですか?」
「……ぅ、ん…っぇく…」
迷惑かけちゃった、また。
入学式のときも、クラス替えのときも、初対面のときはいつもそう。怖い?…いや違う、きっと不安なんだと思う。
今はみんな、かわいいって頭撫でてくれるけど最初はすごく迷惑だったんだろうな。
真田くんの時は、大泣きしちゃったから。
「……ねぇ、真田」
「む?」
「あの子、1年生?」
「……俺のクラスメートだ」
「え!嘘!3年生!?」
後ろでプリントを拾ってくれていた幸村くんと真田くんの会話が聞こえる。
どうせわたしは影が薄い空気みたいな人だから、誰にも知られてないんだろうな、…ビンゴ。
幸村くんがあわてて、ごめんって言ったのが聞こえた。
「…ぅ、…もうだいじょう、ぶで、す。…ごめんな、さ、いひろく、ん…」
「いえ、大丈夫ですよ」
ぽんぽん、ってしてくれるひろくん。紳士って言われるだけあって、すごく優しい。
まわれ右をスローでしたら、プリントと鞄をもって待っていてくれる幸村くんと真田くん。
………大きいから首が痛いや。
「ごめんね、…えっと、ひなちゃん?」
「…こちらこ、そ…ご……なさぃ」
「はい、どうぞ」
「…ぁ、り…がと…ぅ……ぃ…す」
しゃがんでくれる幸村くん。鞄をすっとだしてくれた。うさちゃんのついた鞄。
……汚れちゃったかな?
「天津、プリント持って行ってやろう。…怪我はないか?」
「はぃ、真田くん。…ありがとう、ございます」
「うむ」
頭をそっと撫でてくれる真田くんも、パパみたい。
幸村くんと、ひろくんが唖然とした顔で真田くんを見ていた。
…不思議なの、かな?
「ひなちゃんは、何部?」
「…ぇ、と…帰宅部、です」
「そうなんだ」
ひろくんと手をつないで、となりに幸村くん、そのむこうに真田くん。
テニス部の部長さんが幸村くんだってことをはじめて知って、真田くんが以外と優しいことに2人ともびっくりしてて。
テニス部の存在は知ってたけど、興味がないから知ろうともしてなかったっけ。
♪〜〜〜
「……………ぁ、」
ごめんなさい、と言って携帯をとる。天津雄二の名前が表示されていた。
「…ゆうちゃん、?」
「ひなちゃん?今駅だから、校門でまっててね」
「ぅん、わかった」
ぱたん、と携帯をとじ手に持つ。
「ひろくん、真田くん、…ぇと幸村、くん。…今日、はごめん、なさい」
上を見上げれば、笑ってくれる3人。
迷惑かけたけど、かけっぱなしじゃいけないから。
こうやって笑ってもらえると、うれしくなるのは誰も一緒なんだろうな。
「大丈夫だよ」
「大丈夫だ」
「大丈夫ですよ」
「…ありが、とう」
自然とでてきた笑みに、みんなが笑って頭をなでてくれた。
「ひなちゃん、」
「……?」
「これあげる」
幸村くんが私の手の中に入れたもの、いちごみるくのキャンディー。
うれしくなって、顔をあげると、
「おわびだよ、あげる。じゃあね」
「…はいっ、です!」
手を振って、お別れをした。
おともだちが、増えました。
(ひなちゃん、どうしたの?)
(ゆうちゃん、飴をもらったのです)
(それはよかったね)
(はいですっ)