山紫水明
□肆
2ページ/5ページ
「ねぇ白、鬼兄弟が帰ってこないわ。少し遅すぎるんじゃないかしら」
「確かに少し気になりますね。再不斬さん、口寄せに様子を見させてきます」
再不斬の了承を取って、白が印を組み上げ、1羽の白ウサギを呼び出した。
白の命を受けてウサギはぴょんぴょん跳ねていった。
しばらくしてウサギが帰ってきた。
その報告を聞いた白が少し焦った顔を上げた。
「詳しいことは分かりませんが、鬼兄弟は捕らえられたようです」
再不斬がピクリと反応し、室内を緊張が走った。
「白、雲居、出発の支度をしておけ」
「「はい!」」
手早く忍具を揃え、ポーチにまとめる。
ロビーに出るとガトーが手下を従えて立っていた。
「再不斬、タズナ暗殺に失敗したそうじゃないか。えっ?霧忍は大したやつがいないのか?やつも木の葉から手練れを雇ったようだし大丈夫なのか?」
再不斬の眉間に深いシワが刻まれた。
彼の手が首切り包丁を掴む。首切り包丁の切っ先は綺麗な弧を描いてガトーに向かう。
雲居もガトーの手下も思わず反応した。
「平気です。当たりません」
雲居に白が呟く。
果たして白の読み通り、切っ先はガトーの目の前で止まった。
「オレ様を誰だと思っている。この桃地再不斬を」
笑みすら浮かべて再不斬はそう吐き捨てた。
負け惜しみのように叫んでいるガトーを置き去りに、一行は歩き出した。