氷姫
□傷心
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「よし、じゃあスタート!!」
シスイの声と共に演習の幕は切って落とされた。
シスイを捕まえたらイタチとヒスイの勝ち、イタチとヒスイ両方が捕まってしまったらシスイの勝ち、だ。
「殺すつもりで来ないとオレは捕まらないよ。これでも警務部隊の部隊長だからね」
とりあえず手裏剣術を仕掛けてみたが全て避けられてしまった。頭に血が昇り鎖鎌を構えるヒスイをイタチが制した。
「ただ闇雲に向かってもダメだ。協力していこう」
手短に話し合い、ヒスイはちょいとシスイの前に飛び出した。
鎌を投げつけた。
シスイはさっと避け、ヒスイに飛びついた。
「つっかまーえた!…て、え?」
手がスルリと宙をかく。シスイは慌てて写輪眼を開いた。
「分身!?」
ハッと振り返ったシスイの写輪眼に鎌を片手に切りかかってくるヒスイが映った。
まさかもう分身を使えるとは思わなかった。そう思いながらもヒスイとの力の差は歴然。シスイはヒスイを組み敷き、縄をかけると転がした。
「あ〜もう!あとちょっとだったのに」
「まだまだだね。さぁてイタチを捕まえに行くか」
去っていくシスイの背が見えなくなるとヒスイはもぞもぞと動き出した。肩の関節を外し、すり抜ける。
「縄抜けの術成功!」
1人でこっそり微笑んだ。
――ドーン!!
低い爆発音がした。今のところ作戦は成功だ。
シスイははね飛ばされて強かに打った頭をさすっていた。ヒスイがさっき出て来ていたのはイタチがトラップを仕掛ける時間を稼ぐ為だったのか。恐らくこの作戦を立てたのはイタチ。将来は恐ろしいかもしれない。
イタチが風魔手裏剣を投げてきた。その手裏剣を避けようと屈んで呻いた。
「影手裏剣…」
背後で風を切る音を聞いてシスイは遠い目になった。たかが4、5歳の子供に自分は何をしているんだろう。殺さない様に捕まえるのがこんなに難しいなんて。
その日、たかが4、5歳の子供にシスイは一瞬本気を出した。