火雲

□憧‐[
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「ここにきて眠くなってきたな〜」

あくびを噛み殺してあやみは母に頼まれた野菜を抱え、てこてこと歩いていた。

無罪が証明されて警務部隊から解放され、家に帰ったらもう昼だった。
その後昼食をとり、母からおつかいを言付かって野菜を買いにいった。
今はその帰りだ。

夕暮れが迫り、空が真っ赤に染め上げられる。

その空を見上げながら自宅の門から一歩踏み出し、そしてあわてて身を引いた。

何人かの人影が宙を舞い、地へ叩きつけられた。

「くッ…イタチ…!」

「さっきも言ったハズだ。見た目や思い込みだけで人を判断しない方がいい。オレの気が長いと勝手にしタカを括るからだ…」

あやみは思わず息を飲んだ。
今まで1度も見たことの無い兄がそこにいた。

「一族、一族…そういうお前たちは己の器の大きさを測り違え、オレの器の深さを知らぬから今そこに這いつくばっている」

「…シスイは最近のお前を監視していた…。暗部に入って半年…お前の言動はおかしすぎる。お前は一体何を考えて…」

―幻術を自分で、あるいは誰かがかけた可能性がある。
―遺書が見つかった。これがもしシスイ以外の何者かが書いていたとしたら可能性があるのは写輪眼の使い手

あやみの脳内にふと先ほど警務部隊の隊員が話してくれた言葉が甦る。

瞬身のシスイとうたわれた彼を落とせるほどの上級幻術の使い手で写輪眼保持者―
目の前に該当者がいるような気がした。

次の瞬間、あやみは勢いよく首を横に振ってその可能性を否定した。

そんな馬鹿なことがあるわけが無い。

兄さんがそんなことをするはずがない。シスイさんだって本当に自殺だったのかもしれないではないか―
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