天華
□蘆牙
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「父上」
「真木か。どうした、こんな時間に」
「教えていただきたいことがあるのです」
数日後の満月も高くなった頃、真木は仏間の部屋を訪れていた。
仏間が真木のもとを訪れることも、真木が仏間のもとを訪れることも滅多に無かったから、仏間が少しばかり驚いた顔をするのも無理はなかった。
「今、我らが千手一族の勢力はどこまでか見せていただきたいのです」
「そういうことか。これを見ろ。千手の勢力はこの範囲…今この部分で羽衣・うちは一族と対峙している」
仏間は娘との間に地図を広げて見せた。
「なるほど、この先に味方はいない…ということですか?」
「そうだが……真木、何をする気だ?」
何かに感付いた仏間が真木を牽制するように声をかける。真木は曖昧な笑みを浮かべ、立ち上がった。
「……ありがとうございます」
瓦間が殺されて数日後、板間も殺された。
真木の心は沸々と煮えくり返る憎悪で満たされていた。
思うように泣けない辛さも全てが憎悪に変換されているようだった。
このまま憎しみのままに動いたら、おそらくもう戻れなくなってしまうけど、この戦いは絶対止めてやる。
私達から可愛い弟たちを奪った羽衣一族とうちは一族は絶対に許さない。
真木は闘争区域に向けて地を蹴った。