山紫水明
□肆
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再不斬さんが作り出した霧で航路を覆い、波の国へ向かった。
「霧の里と少し似ているけどここは穏やかな気候をしてるのね」
上陸して、霧が晴れると、雲居は辺りを見回しながら呟いた。
すごく水が多い国だ。
遠くの方に作りかけの橋が見えた。
再不斬さんはどんどん森に入っていく。
慌ててあとを追っていくと、三角の建築物が木々の合間に建っていた。
再不斬さんはその中に用があるようだった。
「待ちわびたぞ、再不斬」
人相の悪い人に案内され、通された部屋の中央のソファーにガトーがどっかりと座っていた。
「この前話した通り、お前達には橋職人のタズナを殺してもらう。奴は木の葉隠れの里からの帰途についている」
ガトーから再不斬さんが写真を受けとる。
ちらりと覗き込んだ写真には1人の老人が写っていた。
「失敗は許さんぞ!女子供もいるようだが大丈夫なのか!?」
叫んでいるガトーにさっさと背を向け、一行は割り当てられた部屋へと向かった。
部屋にはベッド以外何も無かった。酷く殺風景なその部屋に腰を下ろし、再不斬が、皆が見えるところに写真を置いた。
「橋職人ぐらいで再不斬さんが出る必要は無い。我等が行く」
皆が落ち着くとすぐに鬼兄弟が口を開いた。
「木の葉隠れからの帰途となると忍を雇っている可能性が高いですね」
「そうだな。お前ら、気を抜くなよ」
鬼兄弟は揃って頷く。
緊迫感が室内に溢れた。
「行け」
その緊迫感の中、再不斬の言葉が低く紡がれる。
鬼兄弟達が姿を消した。