山紫水明
□漆
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何かがどさりと倒れる音がした。白かとぎょっとしたが、続いて聞こえてきた白の声にホッと胸を撫で下ろす。
だが、魔鏡氷晶の中で膨れ上がった膨大なチャクラに、身体中の血が全て抜かれたような感覚をうけた。
「(なに?このチャクラ…怖い!)」
膨れ上がるチャクラはとどまることを知らず膨張していく。魔鏡にヒビが入る音が聞こえた。
雲居は思わず氷遁の印を結ぶ。
「氷遁・吹雪」
大気が渦巻き、魔鏡に雪が吹き付けられる。
ヒビはやや押し戻されたかのように見えたが、爆発的な威力を持ったナルトのチャクラは魔鏡を内側から叩き割った。
比較的魔鏡の近くにいた雲居にも爆風が叩きつけられる。
雲居は思わず目をつぶった。
ナルトは白の面を叩き割り、もう一発殴り込む寸前で拳を止めた。
「お前はあん時の…!」
「何故止めたんです…?君は大切な仲間をボクに殺されておいて…ボクを殺せないんですか?」
ナルトはハッキリと顔を歪めた。そして本当に辛そうに白を殴った。しかしその拳に威力は無い。
白はわずかに切れた唇の血を拭うと真っ直ぐにナルトを見据えた。
「先程までの勢いはどうしたんです?そんな力じゃあボクは殺せませんよ」
うつむき、拳を震わすナルトを見つめ、白はため息をついた。
「よく勘違いしている人がいます。倒すべき敵を倒さずに情けをかけた…命だけは見逃そう…などと。知っていますか?夢もなく…誰からも必要とされず…ただ生きることの苦しみを」