短編
□ハロウィン
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玄関のインターホンが鳴ってイタチは本から顔を上げた。
父は仕事で外出している。弟のサスケも今日は子供会に行ってしまった。
「イタチーちょっと出てくれない?あ、そこの袋持って」
ミコトは料理の手を休めずに棚の上の袋を示した。
「うん、わかった」
――カチャリ
「とりっくおあとりーと!!」
ドアを開けたとたん今年4歳になるサスケの舌っ足らずな声が聞こえてきた。見れば後ろにぞろぞろとKONOHAアパートの子どもたちがくっついている。
「兄さん?お菓子くれないといたずらしちゃうよ?」
イタチは返事に窮した。かわいい弟にお菓子をあげたいのはやまやまなのだが・・・。
視線が泳ぎ手元の袋にたどり着く。ちょっと開いてイタチは安堵の息を吐き出した。
「ほらサスケ、お菓子をあげるよ」
「あ、兄さん、ヒナタとサクラといのとキバとシカマルとチョウジとシノの分もちょうだい」
わざわざ一人一人の名前を並べる弟にイタチはにこりと笑みを見せて他の子の分も渡した。
「ありがとう兄さん」
「サスケのにーちゃん、ありがとう」
子供達は礼を言いながらぱたぱたと隣の部屋へと走っていた。
イタチは居間に戻り再び本を開いた。
「ありがとうイタチ」
「うん・・・」
ミコトは料理を終えてイタチの前に腰を下ろした。
「アナタもまだまだ子供なんだからたまには遊んでくればいいのに」
「相手がいないんだよ。シスイ兄さんは中学受験で忙しいし」
ミコトは困ったように笑った。
「イタチ、ハロウィンで言う言葉といえば?」
「・・・Trick or treat?」
「はい」
机に置かれたそれには母の温かさが詰まっていた。
【Fin】
†††††
アトガキ
とても短いですが・・・。現パロというものを初めて書いてみました。
イタチって妙に大人びてて、私は「もっと子供時代楽しもう!」と言いたくなってしまいます。
10月31日