僕と彼女の殺人

□始まり
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〜澄んだ空に日が昇る頃、一人の人間の生涯は幕を閉じた・・・・・・〜


空は青に少しの白をまぶしてうだるような暑さを提供していた。
そこに五月蝿いほどに鳴き喚く蝉の声が混ざれば、暑さは相乗効果でさらに増したように感じられる。


そんな中、黒板を埋め尽くすような文字を書き終えた教師がマニュアルに書いてある通りに言葉を吐き出す。
そんなことなら猿にも出来るだろ・・・思っても口になんてしない。
言うだけ無駄だからね。

「はぁ・・・・・・・」
今の心境を一言で言えば退屈。
下敷きを団扇代わりにして暑さをしのぎつつ、いつも通りノートにペンを走らせる。
もちろん板書するはずなんてありません。
そんなの愚行以外の何物でもないだろう。
ノートの1ページを丸々使って昨日起こった殺人事件の現場を表記する。


ここのところ連続して起こる殺人事件。
昨日で被害者は5人目。
犯人に関する手がかりは5件目が起こった今でも一切無し。
警察の無能さを悲観し憤るべきなのか、はたまた犯人の完璧ともいえる犯行に称賛の言葉を送るべきなのか・・・。

まあそんなのはどうでもいいとして。

昨日の被害者は32歳の男性会社員。
全身を鋭利な刃物で切り付けられ腹部から内臓が引きずりだれていた。
死因は失血性のショック死と発表されている。
5人目の被害者と、過去4件の被害者の共通点や接点は・・・・・・やはり0。
警察もこれは無差別に行われている犯行と断言していた。
被害者の死後硬直からみて殺害時刻は3時30分から4時30分の一時間の間。
目撃者はおらず、今回も手掛かりになりそうなものは一切ない。
犯行内容から犯人像は精神異常者、または快楽殺人者とも発表されていた。
そんなの今までの犯行を鑑みれば誰にでも今回の事件の犯人がまともな人間のやることじゃないぐらい解り切ってることだろうに・・・・・・。


一通り昨日の事件の内容を書き終えるとひとつ伸びをしてから書いた内容を読み直す。
そして一人思案する。
「もう少しスマートな殺人にすればよかったかな・・・。」

そんな思案を妨げるように授業の終了を知らせるチャイムが校内に鳴り響いた。
さて、騒がしくなる前に屋上で思案の続きをするとしますか。


と、その前にここらで自己紹介
僕の名前は桐崎 杏。趣味は殺人考察にでもしておくか。
職業は、この恐ろしいまでに退屈な四条宮高校の2年生。
そして・・・・・・・・巷で噂の殺人鬼。
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