聖闘士星矢
□毒薔薇の甘美
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風が吹く度にゆらりゆらりと揺らめく深紅の薔薇達――。
それをただ無表情に眺めるその瞳が、何故だか哀しげだった…。
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カル「デジェルっ!いるかっ!?」
バッターン!!
荒々しく宝瓶宮へ駆け込んだ蠍に、
デ「……。カルディア…もう少し静かにできんのか?」
直ぐ様、呆れたデジェルのおとがめを受けるが、この男-カルディアはそんなのを気にする筈もなく…、
カル「っんだよ!一々かてーこと言うなよな!つーかそんな事よりも、お前に訊きたい事があんだよ」
やれやれ…と半ば呆れ返ったものの、折角来た友の話を訊くことにした。
デ「それで、訊きたいこととはなんだ?」
カル「…魚座のこと」
デ「…アルバフィカのこと?彼がどうかしたのか?」
カル「………」
カルディアはいつもの威勢がなく、どこかそわついていた。そんな彼に、デジェルは困惑するが、カルディアがアルバフィカの事を気にかけている事が何より一番彼を驚かせた。
デ「…?カルディア?」
カル「…っ…やっぱ、いい…」
カルディアは部屋を出ようとした。それに慌てたのがデジェルだった。
デ「っちょ、ちょっと待て!カルディアっ!一体どうしたんだ??」
カル「っ…!な、なんでもねーてっ!!」
デジェルに咄嗟に掴まれた腕。
カルディアはその腕から逃れようとするが、それをデジェルは止めた。
デ「…落ち着け。とりあえず…座らないか?」
カル「……………」
デジェルの言葉に案外素直に従った。
椅子に腰掛けるカルディアを見届け、デジェルも近場の椅子に座る。
デ「…アルバフィカと何かあったのか?」
最初に口を開いたのはデジェルで、その質問にカルディアは首を横に振る。
デ「ではどうした?お前は何が訊きたいんだ?」
カル「………」
デジェルの質問に、カルディアは暫し沈黙したが、重い息を吐き口を開く。
カル「……気になる…」
たった一言だけカルディアから紡がれ、一瞬何を言ったのか判らなかったデジェルは、
デ「…は?」
カル「…だから気になるんだよっ!」
少し苛立ちながら言うカルディアに、漸くデジェルは納得する。
デ「お前は私にアルバフィカの何を訊きたがっていたのだ?」
今度はそう問い掛けると、カルディアはじっと床を見詰めたまま、いつもよりも数段小声で話す。
カル「…アルバフィカが気になって仕方がない。」
デ「………」
カル「どうしちまったんだろ…。なんか……アルバフィカを見てると心臓が熱くなるし…なんか…ムラムラする…」
デ「…………。それは…恋ではないのか?」
デジェルは首を傾けながらそう切り返すと、カルディアは目を見開き…、
カル「っ!?俺がっ!?アルバフィカにっ?!」
デ「……そうだろ?ムラムラは兎も角、気になるし心臓が熱くなるって事はそうじゃないのか?」
カル「…俺が…アルバフィカを…」
デ「………」
俯き、考え込む姿はいつものカルディアからは想像つかなかった。