詰め合わせ集@
□複雑な愛し方
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揺らめく焔…
絶対的な浮欲ーー…
全てにおいて、オイラ達はアイツに負けていたーー……
「…葉…きみにはもっと強くなってもらわなきゃ困るんだ。」
頭上からオイラ達を見下ろしながら云うアイツに、ただ睨み付けるしかできんかった。
「…ハオっ…!」
「じゃあね。葉…もっと強くなってくれよ?」
そう言い残すと、ハオはオイラ達の前から姿を消した。
******
ハオのシャーマンファイトを観戦しに行ったオイラ達は、ハオの強さを目の当たりにしてしまい、無言の帰宅をした。
「……なぁ…本気でハオの奴に勝てるのかよ……?」
宿舎に着いた途端に、ホロホロが呟くようにして言った。
「……めらつえーぜ…」
ホロホロに続いて、りゅうまでもが弱気になっていた。
「…ふん。貴様等には到底太刀打ち出来まい。」
「…っんだと?!お前なら対等にやり合えるってのかよっ!!」
蓮の言葉に、ホロホロは怒りを露わにし、怒鳴った。
今にも殴りだしそうな勢いのホロホロに、蓮は冷めた視線を向けた。
「…今の俺でも対等には闘えん…」
「……蓮…」
「…闘っていた時の奴を見なかったのか?奴はっ……全力を出してはいなかった!」
「………っ」
蓮の言葉を聞き、ハオの試合を思い出すかのように瞳を瞑る。
ハオはどんな相手だろうと、全力は出していなかった。そしてーー全て…一撃で倒していた。
ハオは余裕の微笑を浮かべ、勝利とともに姿を消す……
「……ありえねーぜ…」
「…ホロホロ…」
「…俺達は…余裕に構えてなんかいらんねーてのにツ…」
「……アイツにとったら全力を出さずとも勝てるってかぁ…」
「…今の俺達では…一撃でやられる……」
一気に暗くなっていくホロホロ達は、苦虫を噛み潰したかのような顔をしていた。
「……まぁ、なんとかなる!な?」
その場の雰囲気を和ますかの様に、笑いながら話す葉。みんなの視線が葉に集中した。
「なぁに、オイラ達はオイラ達に頑張ればいいんよ。焦ることはないんよ。」
みんなの視線をものともせず、葉はお得意のユルさで応えた。
「……おまえなぁ…;」
「少しは慌てろよ…;」
「貴様はいつもユルいな」
「そうだぜ!旦那の言うとーりだぜっ!!」
一気に和んで、いつもの彼らに戻っていた。
「うぇっへっへ」
葉はいつものユルい笑い声を上げると、頭を掻いた。
「んじゃぁ、飯にしよーぜ!!」
「お!いーな!!」
「ちょうど腹も減ってきたしな!!」
「そうと決まれば食堂に行こーぜ!!」
「ふん。腹が減っては修行も出来んからな。」
ホロホロ、チョコラブ、りゅう、蓮はいそいそと部屋のドアまで行った。が、葉ただ一人、4人の後を追うことはせず、その場に佇んでいた。それに気がついたホロホロは、後ろを振り返るといつもの口調で叫んだ。
「?おい!葉!!何やってんだよ!置いてっちまうぞ?!」
ホロホロの声に、蓮はうざそうに眉根にシワを寄せたが、りゅう、チョコラブ同様、葉の方に視線を移した。
当の本人は、またユルく笑うと、片手を上げた。
「…わりぃ。先に行っててくれ。」
それを聞いた4人は、軽く返事を返し先に部屋を出ていった。
一人残った葉は、未だ上げていた片手をゆっくりと下に下げた。
「…………」
窓の開いているこの部屋に、夜風が肌に心地良く吹いた。
ーー……ハオを倒す……オイラ達の手で?オイラに…ハオを……
「……っ」
葉は、苦々しく唇を噛んだ。
うっすらと滲む血にも目もくれず、ただ己の思考に苦しんだ。