詩
□声
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あちらこちらで声が囁く
虫の羽音がさざめくように
低い地響きが空気を揺らすように
声は重なる重なる
どこまでも
繰り返す同じ言葉が何度でも
例え耳を塞いでも
例え耳を切り取っても
この声は消えはしない
なのに私の声はどこにいった
口を開いてもでるのは吐息だけ
どんなに喉を震わせ吐き出しても
私の喉は引き攣るだけ
私の私の声が消えた
ああ声よ私の声はどこ?
声のない私に他の声がのしかかる
無慈悲に他の声が声のない私を取り囲む
助けて助けて
声のない私は救いを求める
助けて助けて
上から下から他の声が湧いてくる
助けて助けて
誰も声のない私の叫びに気付かない
助けてたすけ
声がでる
出せなかったはずの声が出た
周りの声と同じ言葉を囁く私の声
周りの声と同じ言葉を囁く私の声
私の体がどこにもない
どうしてと考える頭がない
逃げたいと動かす足がない
嫌だと払いのける手がない
壊れたレコードのように繰り返す声
私も同じように繰り返す声
私がいない
声がまた一つ
私がまた一つ
数を増やし消えていった