novel
□とりかえっこキャンペーン
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あの日の夕方、すごくきれいな夕日が印象的だったことを覚えている。透き通るようなオレンジ色で心のもやもやを全部取り払ってくれそうな純粋な空だった。
そんなとき、ネズミはシェイクスピアの代表的な悲劇作品「マクベス」を舞台で演じていて、ぼくはと言えばイヌカシの犬たちを川の水で洗ってあげていた。
…ぼくはその時、あんなことになるなんてちらとも考えてなかった。…いや、ぼくがあんなドジしなかったら
…なんて今でも考えてしまう。
「おい、紫苑。その犬で今日はしまいだ」
「え、いいの?まだ何匹か残ってるよ?」
「ああ、今日はもういい。あんた何時かわかってんのか?もう日が落ちて4時間くらい経ってるぞ」
「ええっ、もうそんな時間か…」
「そんなに頑張らせちゃ、おれがネズミに怒られるんだ。あいつ、よっぽど紫苑を過保護扱いしたいらしい」
「そんなんじゃないと思うけど」
「まあいい、今日は家に帰んな。また明日やってもらえばいいから」
「…わかった。ありがとう、イヌカシ」
自分が時間に気付かなかったことに対し、びっくりしながらイヌカシの言葉に従うことにした。