ブック2
□導かれるままに1
2ページ/17ページ
巨大な講堂では、入学式お決まりの賛辞や叱咤激励の言葉が延々と響いている。
親父どもの話ってどうしてこうも長いのか。
面白い話をしろとは言わないから、せめて簡潔にまとめてほしい。
そんなことを思いながら暇を持て余していると、
「なぁ、あのじいさん達さっきから同じこと言ってねえ?」
と隣の男(男子高だから当たり前か)が話しかけてきた。
「この5分で同じ話が3回程ローテーションしたな」
「あはっ、数えてんのかよ!お前も相当暇してたんだな!もっと早く話しかければ良かったぜ」
「お前、声デカいぞ」
「あっ、やべ。…なぁなぁ、お前なんてーの?俺、中山大祐(ナカヤマダイスケ)っての。よろしく」
ニカッと笑いながら、中山が名乗る。
明るめの茶髪と茶目っ気のある表情。
見た目の通り、気さくそうな男だ。
「俺、内村洋希(ウチムラヒロキ)。」
「よろしく」の一言が言えない。
俺なんかと親しくなっても、きっと中山には何の得にもならない。
中学のときは確かに友だちだけが唯一の安らぎをくれたけれど。
コイツにそれを求めすぎてしまいそうな自分が怖かった。
そんな俺の仏頂面なんか見えなかったのか、
「洋希ね。よっしゃ!友達1号だ」
と中山は笑顔で話しかけてきた。
なんだか毒気を抜かれた。
「お前、絶対良い奴だな」
俺が思ったまま口にすると、
「やめい、男前に言われると照れるわい。
それに、俺的にはヒロキも良い奴っぽそうだよ。クールに俺のボケをキャッチしてくれそう」
と、照れながらもまた人好きのする笑顔で言ってのけた。
良かった、良い奴と友達になれそうだ。
.