ブック2

□導かれるままに1
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巨大な講堂では、入学式お決まりの賛辞や叱咤激励の言葉が延々と響いている。

親父どもの話ってどうしてこうも長いのか。
面白い話をしろとは言わないから、せめて簡潔にまとめてほしい。

そんなことを思いながら暇を持て余していると、

「なぁ、あのじいさん達さっきから同じこと言ってねえ?」

と隣の男(男子高だから当たり前か)が話しかけてきた。

「この5分で同じ話が3回程ローテーションしたな」

「あはっ、数えてんのかよ!お前も相当暇してたんだな!もっと早く話しかければ良かったぜ」

「お前、声デカいぞ」

「あっ、やべ。…なぁなぁ、お前なんてーの?俺、中山大祐(ナカヤマダイスケ)っての。よろしく」

ニカッと笑いながら、中山が名乗る。

明るめの茶髪と茶目っ気のある表情。
見た目の通り、気さくそうな男だ。

「俺、内村洋希(ウチムラヒロキ)。」


「よろしく」の一言が言えない。
俺なんかと親しくなっても、きっと中山には何の得にもならない。

中学のときは確かに友だちだけが唯一の安らぎをくれたけれど。
コイツにそれを求めすぎてしまいそうな自分が怖かった。

そんな俺の仏頂面なんか見えなかったのか、

「洋希ね。よっしゃ!友達1号だ」

と中山は笑顔で話しかけてきた。

なんだか毒気を抜かれた。


「お前、絶対良い奴だな」

俺が思ったまま口にすると、

「やめい、男前に言われると照れるわい。
 それに、俺的にはヒロキも良い奴っぽそうだよ。クールに俺のボケをキャッチしてくれそう」

と、照れながらもまた人好きのする笑顔で言ってのけた。



良かった、良い奴と友達になれそうだ。




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