恋人たちに5のお題

□それは分割された一つの恋。
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●それは分割された一つの恋。



(共通テーマ:禁断の恋)
written by Saina







ヨハンver



いけない恋とは、どんなモノなんだろう?
チラッと隣の人を覗き、ヨハンは教師の言葉を聞きながらノートにメモする。
ふと彼は思う。自分は恋をしているのは、分かっている。
だがどうして、自分はそれをいけない恋と思ってしまうんだろう
(相手は友達だから?)
――――いいや。友達だけではいけない恋とはない。
(相手は親友だから?)
――――上と同じだ。いけない恋ではない。
(相手は男だから?)
――――確かにそうかもしれない。男同士が恋をしても何が意味がある?

恋には自由というモノがあると言われている。
でも実際、それはただの口言葉で、この世界にはそういう自由なんていない。
同姓を好きになってはいけない。
子供に手を出してはいけない。
婚約者や恋人、パートナーがある人と恋をしてはいけない。

本当は、この世界に自由なんていない。
自由の恋なんて、どこにもいない。
ならば、何故そこに自由があるって言われる
想いだけが、自由ってことか?


恋だと分かって、彼は触りたかった。
相手を触りたい。顔を触りたい。
耳や瞳、髪、口唇、指先、腕、―――彼のすべてを触りたい。
だが何故自分は手を伸ばすさえできない。
何に迷っている。
何に疑っているんだ俺は!

「あ」
十代の返事に我に返るヨハン。
どうやらシャーペンが落したらしく、仕方ないとヨハンはそれを取り上げると、十代の手と重なる。
丁度同じタイミングで二人がシャーペンを取る時だった。
「あっ!サンキューヨハン!オレは自分でとれ、」
「っ…!!」
放れた。
いきなり自分の腕を引っ張るヨハンに十代は疑問を抱く。まるで嫌なモノを触ったような、怖がる青い瞳。
「っあ、ゴメン……ちょっと、静電がぴぴっちまって」
「あ、そ…っか。びっくりしたぜーサンキュ」
改めて笑顔を咲く十代。彼はシャーペンを取り、再び暇そうに教師の言葉を聞きながらシャーペンを遊ぶ。
ヨハンは彼を見て、先程触った手を握りこむ。
(何がいけないのか)
(何故、いけないのか)

(どうして恋人などいない彼にそれをしてはいけないのか)
――――あぁ。なるほど

だってこいつ、俺の事を好きじゃないんだ



いけないとは、人間の気持ちが決めたこと
片思いこそ、いけない恋



叶えられない 禁断の恋だ



サラサラと十代は頭が撫でられる。
振り返ると、ヨハンが彼の頭を撫でいた。
「どうしたんだ?」
「…いいや、別に。」
「?変なヨハン」

明るい笑顔でヨハンは口元を上げ、
少し辛そうに、彼に微笑んだ。


いけない(禁断の)恋
人間の気持ちこそ禁断のモノかもしれない






それは分割された一つの恋。








十代ver



いけないこと。いけない言葉。
チラッとヨハンの視線を気付かない振りをし、十代はできるだけ視線を前に集中する。
ふと彼は思う。彼は少し、変な恋をしているだろうか。
でも彼は、これはいけないモノだと、頭のどこかが教えている。
(相手は男だから?)
――――いいや。彼自身はこんな考えはない
(相手は友達だから?)
――――いいや。近いかもしれないけど、そこまでいけないモノではないと思う
(相手は、彼だから?)
――――そう、かもしれない。

彼だからこそ、彼は恋に落ちたと思う。
相手は『彼』でなければ、彼はこんな感情を持つ訳がないし、そこまで相手の行動を気にする筈がない。


誰から聞いたんだ。
恋には自由があるって。
自由なのに、何故自分はそれが自由じゃないって感じるんだろう
周りの視線があるからか?この世界のルールではだめってことか?
思うことだけが、自由なのか?

考え込むと指から落すシャーペン。「あ」と我に返り、十代はそれを取り上げようと一つの手を重なる。
…ヨハンの手だ。

思わず、一瞬だけ動揺してしまった。
「あっ!サンキューヨハン!オレは自分でとれ、」
「っ…!!」
すぐに誤魔化そうとするが、先に相手の行動にチャンスを取られてしまった。
…拒んでいる。

ヨハンは彼自身の手を引っ張った。まるで十代の動揺を気付いたように、触りたくもないその瞳。
……あぁ。まさに最悪の状況だ。
「っあ、ゴメン……ちょっと、静電がぴぴっちまって」
「あ、そ…っか。びっくりしたぜーサンキュ」
本当かどうかわからないけど、とりあえず十代は笑顔で返事する。シャーペンを取り、ヨハンを見ない様に十代はシャーペンを遊びながら教師の方向を見る。
もう一つの手は、震えているけど。
(あぁ。いけないって、こういうことか)


――――拒絶されてしまうことは一番怖い。
彼が相手が好きだとしても、相手は自分が好きなわけじゃない。
一緒に居られるわけじゃないから、それを

いけない(禁断の)恋と呼ぶのか


本当は、もう少し触らせたかった。
彼と手を繋ぎたい。彼と普通に、よく見る恋人同士で居たい
なんで

なんでオレは  こんな恋をしちゃうんだろう


ふといきなり撫でられた。
突然の感覚で視線を隣に向くと、ヨハンは彼の頭を撫でいた。
「どうしたんだ?」
「…いいや、別に。」
「?変なヨハン」

―――変なのは、オレだ

ゴメンな。ヨハン。


明るい笑顔を咲き、十代は見ないことにした。
ヨハンの、複雑で辛そうな顔を。


ゴメン。


いけない(禁断の)恋
いけないだって知っているのに、何故オレはこんな気持ちを手に入れたんだろう
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