企画小説

□A Snowball Fight!
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いつもはチームメートのことなど毛ほども気にかけないというのに、青峰はこういうときだけは変に鋭い。
苦虫でも噛み潰したような表情になった若松は一歩一歩後退していくのだが、青峰はそんなもの関係ないとでも云うように間合いを詰めてくる。

「だあぁっ!来んな!離れろこの野郎!」

最後の手段として、若松は素早く雪を握りしめ小さなボールを作る。
そしてそれを思いきり、青峰に…青峰の顔面に向かって、思いっきり投げつけた。

「ってぇ!何しやがる!!」

「はっ!いい気味だなぁおい!」

「アンタなぁ…っ!」

額に青筋を浮かべた青峰が同じく雪を掌に、そして若松に向かい投げる。
だがしかし、若松は華麗に雪玉を避けた。

「ったく、アンタ一体どこのガキだよ!」

「あぁ!?誰がガキだコラァ!!」

「アンタだよ!アンタのそーゆーとこだっつの!」

「なっ!るっせーよ若ハゲ!でこっぱち!!」

「っんだと!?誰がでこっぱちだ!」

「てめぇだっつーの!っのバーカ!!」

青峰が叫ぶ。
返ってくるのは若松の怒号。
一体何度繰り返されたことだろうか。
もはや子供の口喧嘩となった雪合戦は日が暮れるまでただ続いた。


********


「ふぅ…」

「今日も疲れたのー」

練習を終えた今吉と桜井は、疲れと寒さのダブルパンチを喰らいながら帰路へとついていた。

「そういえば今日ってクリスマスイヴでしたっけ…」

「せやなぁ…もう真っ暗や」

冬場というのは日が沈むのが本当に早い。
まだ五時を少しばかり過ぎただけだというのに。

「ホンマ…冬は嫌やわ」

今吉がどうしようもない冬への愚痴を零したそのとき。

「…ん?主将、あれ…」

桜井が何かに気がついたようで、向こうの曲がり角を指差した。

「何や?」

示された曲がり角のすぐそこには空き地がある。
空き地からは聞き覚えのある二つの声がしていた。
近所迷惑ばりの大声が飛び交っているのが、ここからでもよくわかる。

「のぉ桜井…」

「はい…」

「まさかとは思うんやけど…」

大体その声の主はわかりきっているが、まだ確定ではないと淡い期待を胸に二人は空き地へと目をやった。

「いい加減諦めて降参しやがれ!」

「アンタがな!」

そこには案の定、未だに雪合戦を続ける青峰と若松がいた。

「やっぱりかい…」

今吉は頭痛にでも襲われたのか頭を押さえた。
時間も時間である、早く止めなければ本当に近所から苦情が来てもおかしくはない。
とりあえず声をかけようと、今吉が口を開いたその瞬間。

「あぁっ、主将!危なっ…!!」

「ん――?」

べしょっ、という音がして、若松、青峰に続き三人目の顔面キャッチ。
しかも今吉は眼鏡をかけているため、視界を含めいろいろと大変なことになっていた。

「げっ…」

「あれっ、主将!?何でここに…!」

狼狽える桜井や若松の疑問は一切無視し、無言で顔を拭う今吉。

「……桜井」

そして、何やら黒いオーラを発しながら一言。

「石ころ集めて来てくれへん?」

静かな迫力に桜井は黙って従うしかない。
雪の中から掘り出されたいくつかの小石を雪で包み、その分だけ雪玉を作る。
ここまで来れば、自然にわかる次の行動。

「さーて…さっきぶつけてきたんはどっちや?」

二人がお互いを指差して責任を擦り付け合った瞬間に、両方向へ二つの雪玉が飛んでいった。
ミイラ取りがミイラに――と嘆く桜井はそのうちに巻き込まれ、既に誰からなのかわからない雪玉を浴びまくった。
――…結局その雪合戦は、その場を通りかかった監督によって強制終了させられた。
幸い近所から苦情が来ることはなかったが、次の日監督に厳しい説教をされたのは云うまでもないことである。





End





◇◆◇◆◇◆


ぐだぐだ長くてすいません!
主催者様、読んでくださった皆々様に感謝感謝です!^^

そして桃井ちゃん、出番なくてごめんなさいorz
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