企画小説

□甘いプレゼントに甘いご褒美
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「…あ、焼けた。」

ピー、と焼成が終了した事を知らせる電子音が鳴って生クリームを泡立てる手を止めて火傷をしないよう慎重に取り出す。

「うん、よかった上手くいって…。」

スポンジは歪まずに綺麗な円を描いてふんわりと美味しそうにふくらんでいる。後は生クリームのデコレーションとフルーツのトッピングだけだ。

「うわ、もうこんな時間…早くやらなきゃ。」

壁時計をチラリと見れば文字盤はもう9時過ぎを指している。消灯時間もあるし、早くやらなきゃいけないんだけれど、出来るだけ綺麗に作りたい。…せっかくのプレゼント、だし。青い髪に青い瞳をした目付きの鋭い恋人の姿を思い浮かべて赤面する。

(…ちゃんと、食べてくれるかな…ケーキ。)

基本的にバスケ以外の事には関心を持たない彼のことだから、クリスマスなんてきっと全然気にも止めてない。それはもちろん解っている。解っているからパーティーだとか青峰君のプレゼントとかも望んでない。

…ただ、やっぱり街で見るクリスマスらしい飾り付けやイルミネーション、クリスマス仕様のケーキ材料に心を動かされて作ってしまっている。…自分でも単純で流され易いと思う。けど、
「よし、出来た!」

―――クリスマスはそれだけ皆が浮かれてしまうイベントだから。明日は青峰君の部屋で会う約束してるし、その時に渡そう。そう思って部活の後の作業で疲れた僕は後片付けもそこそこに、直ぐにベッドに入って眠りに就いた。


そして翌日。24日と言えど平日で学校もあるし部活も当然のようにある。その後に急いで部屋に戻ってラッピングしたケーキを持って、青峰君の部屋のインターフォンを押す。

(…うぅ…緊張してきた…)

何だか今更プレゼントってケーキでよかったのかな、とかうだうだ考えていたらガチャっとドアが開いた。

「お―良、はえ―な。…って、」

何だソレ?と言いたげな青峰君の視線を受けて僕はいつも以上にしどろもどろになりながら言った。

「あ、えと…あの、僕が作ったケーキなんですけどその…青峰君へのプレゼントです!」

と最終的にはケーキの箱を両手で持って青峰君に突き出す形で渡す。あぁ…何かこういう瞬間が一番恥ずかしいかもしれない…!!ただ目を閉じてそのままでいたら両手にあったケーキの重さが消えて、頭をくしゃりと撫でられた。顔を上げれば青峰君が顔を後ろに向けて肩を震わせながら笑っている。

「…青峰、君?」

「…あ、いやワリィ……何かお前らしいな、とか思ったら、な?クッ…」

まだ笑いは納まらないらしくもう片方の手で口元を押さえながら僕に話しかける。それを見て漸く今の状況を理解した僕はさっきなんかよりもずっと真っ赤になった。

「―――――っ!!!そ、そんなに笑わなくてもいいじゃないですか…!!」

これ以上ここにいたら恥ずかし過ぎてどうにかなってしまいそうだったから、帰ろうとして踵を帰す僕の肩に青峰君の手が乗っかる。

「悪かった、ちゃんと嬉しいから。機嫌直せよ。」

部屋上がんだろ、と言ってくる青峰君に引っ張られるまま部屋へと上がる。―――別に、機嫌が悪くなったわけでも怒ったわけでもないけど。

(あんな風に笑う、なんて…反則だよ。)

ただ青峰君の笑った顔を見て赤くなった顔をどうにかしたかったから、なのに。そんな事口が裂けても絶対言えないけど。さっきのお詫びなのか、珍しくお茶の用意をする青峰君の背中を見ながらそう思った。

「んじゃ、開けてい―か?」

「あ、ハイ!どうぞ…。」

お茶の用意(お湯を沸かす以外は結局僕がやった)が終わって青峰君がラッピングを外してケーキの箱を開ける。崩れてないかな、と思いながら青峰君の方を見て反応を待つ。

「うぉ…スゲーなやっぱ。店のヤツか?」

「ちゃ、ちゃんと作りました!」

「わぁってるよ、それぐらいスゲーってこと。…これこのまんま食ってい―の?」

「は、はい!」

とりあえずデコレーションは昨日ちゃんと作った通りになっていて一安心。お店でよく見る基本的な苺のショートケーキ。だけど苺をたっぷり使って上に飾る苺はマリネにして見映えも味も考えたから大丈夫、だと思う。んじゃイタダキマス、と青峰君の口に運ばれるケーキを見ながらドキドキした。

「………ど、どうですか…?ってふわぁっ!!?」

「…美味ぇよ。やっぱ良のは違うな―」

「………!!!あ、ありがとう、ございます…。」

ケーキを乗せたフォークを口に入れたまま何も言わない青峰君に不安になって感想を訊いてみたら、いきなり腕を引っ張られて間近に迫った顔をこっちに向けてそう言われた。―――さっきのような笑顔を浮かべながら。また赤面する顔を隠すように下を向く。

(うぅ…というか、何でまた腕引っ張られ、て…)

嬉しいけど居心地の悪い場所で項垂れていたら頬にちゅ、と温かい感触。思わず顔を上げれば今度は額に温かい感触。直ぐ傍には青峰君。

「…え、あ、あの青峰君?」

何してるんですか…?と後退りながら訊けば腰をひっ掴まれてギュッと抱き締められた。

「ん―?かわいい良君が折角プレゼントくれたのにお返しもなんもないってのもダメだよな―、と思って。」

「………え………あの、それって…んむっ!!?あ、んン…ふぅ…っ」

よく意味の解らない話の途中でいきなり唇を重ねられる。突然だった為に緩んでいた唇から容易く青峰君の舌が口内に侵入してきて好き勝手にまさぐられる。息が出来なくて涙眼になって青峰君の胸を叩けばようやく離してくれた。

「…はっ…ぁ…青峰、く…っ」

「甘かったか?ご褒美。」

「……………っっっ!!!」

そんなの、青峰君が僕のケーキを食べたんだから当然だけど。何だかただ頷くのも癪だから回らない頭で青峰君に抱き着いてキスをした。



甘いプレゼントに甘いご褒美

(きっと君のご褒美の甘さは中毒になりそうなぐらいだけどね。)

―――2人一緒になるのなら、多分それも悪くない。



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いやいや甘々すぎてバケツ一杯分砂吐けます…すみません;
主催者様、参加者様、読んで下さった皆様ありがとうございました!

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