novel W

□「トゥーゴーン」
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一筋の涙が頬を伝った



それは思いの外温かくて、流れる感触に何故か酷く安堵し、そして愕然とした



崩れ落ちるほどに絶望して、息をするのも億劫で



それなのに、僕の体はバカみたいに健康で



涙の温度は明確に僕が生きているという証のようで、腹立たしい



いっそのことこの肉体も朽ち果てて、粉々に砕け散ってもう欠片すら残っていないこの心と共に何処か遠くへ吹き飛ばされてしまえば良かった



そうすれば、こんな痛みすら感じずに済んだのに



自分で自分の体をきつく抱きしめながら、ベッドに埋もれ布団に顔を押し付け子供のようにわんわん泣いた



夜が明けたらまた、いつもと何ひとつ変わらない日常が始まる



いつもと変わらぬ笑顔で必死に周りに愛想を振りまいて



どこだか分からないゴールをただひたすら目指して



死に物狂いで走って、走って、走って



その先には一体何があるの



誰に問うているのか



問うたとして、果たして答えは出るのだろうか



分からない



分かりたくない



貴方なら…



そう貴方なら、いつだって迷わず答えを出してくれた



真っ直ぐな瞳で、眼差しで見つめ、僕の小さな手を貴方の大きな手で痛いほど握り締め、僕を正しい道へと導いてくれた



こんなにも貴方を欲しいと思った夜は無い



直ぐに来て、抱いて



僕の大好きながっしりとした腕で、この体を折れるほど抱きしめて



何も心配ない



怖がるな



俺がいる



そう耳元で囁いて



はやく、はやく、



その広い胸に顔を埋めて貴方の香りで包まれたい



貴方の優しくて艶やかな声に酔いしれたい



朝まで、狭いベッドに身を寄せ合って、抱き合って眠りたい



貴方に触りたい



匂いを嗅ぎたい



キスがしたい



はやく、はやく、



この体が消えてなくなってしまう前に、迎えに来て



僕を奪って、逃げて






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