novel V

□「love and hate」
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「何を考えているんですか?」


激しく愛し合った後、ぼんやりと窓の外を見ていた俺は隣から問いかけられた。


「何って…決まってるだろ?お前の事だよ。
………愛してる」


身体を寄せ、抱きしめようとした俺の手をするりとかわし、ベッドから立ち上がった。


「シャワーを浴びてきます」



バスローブを羽織った後ろ姿

浅黒い肌
俺より少し背が高くしなやかな身体つき
お前とは何もかも違う。

ふりかえると、かすかに微笑みながら言った。


「相変わらずウソが下手ですね」


ドアの向こうへ消える。



こいつとこうなったのは最近だ。

お前を忘れるためじゃない。

そう思うのは、俺の言い訳にすぎないのだろうか…


あんなに愛し合ったのに、今は逢う事もできない。



何が気に入らなかったのか?

俺と離れて何ともないのか?

俺がこいつを抱く様にお前も誰かに抱かれているのか?

考えるだけで腹が立つ。


そんな答えの出ない問いを繰り返しながら瞳をとじる。



世界一愛しくて…
世界一憎い…お前


love and hate








貴方の手をかわしてバスルームへ急ぐ。
涙がこぼれないうちに…


「お前の事だよ」


ウソばっかり…
彼といた時は、貴方を見つめる僕の気持ちに気付かなかったくせに…


貴方は彼を忘れない。
僕とは全く違うあの人を…
だってあの人と過ごした時間が、想い出が、貴方を作っているから…


「愛してる」


僕にウソなんて絶対に許しません。
本心からそう言わせてみせます。

でも今は少し泣きたい気分。
貴方の前では、決して涙を見せたくないから…
お湯にもぐって少しだけ泣きます。



世界で一番好きで…
世界で一番憎らしい…貴方


love and hate





-END-

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