仮青エク

□血脈
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擦り切れた膝を腕から引きちぎって布を当て
「ここはどこやろうか」
じくじく傷む足押さえながら
今日、母の営む旅館虎屋から、父の寺身を移すことになった
母は心配して、送って行こうと言ってくれたが
旅館の女将として忙しく働いているのを悪いと思い
「ん、大丈夫や!何回か行ったことあるし」
1人で平気やと意気込んだのは良かった
慣れた道なりを歩んで行けば辿り着けるはずやと思った矢先に野獣の雄叫びに驚いてしまい
足を踏み外してしまい
小さい落とし穴のような場所に転がってしまった
日も次第に落ち始めているのがより一層気持ちを焦らせる
「誰かおらんか」と叫んでみてみるが反響する音は逃げてゆくばかりに
縁にたまってゆく涙を堪えながら
「助けて」と言った瞬間
影が頭上にできた
「いた!坊や!良かった〜」穴の中にお目当ての人間を発見したが余程嬉しいのか「坊、坊どないしはったん」この状況を理解できんといったようにしながら眺めている黒い髪にたれ目の少年が夕焼けに移し出された
「お前、誰や!」いきなり坊呼ばわりされ、しかも寺の愛称まで知っている少年に警戒した
「ぁ、俺、志摩家の末の廉造です」
流石に見知らぬ者に懐く人間はいない、数泊してからの挨拶
紹介遅れてしもうたと
でれりと笑えば
「何や!志摩か!そういやよう似とる」上から見上げた顔からに力を抜くのがとれる
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