猫科悲劇
□猫科悲劇:12
5ページ/6ページ
結局、土方に後ろからホールドされ最初と同じ様な形になった沖田は
右手に爪切り、左手に沖田の小さな猫の前足を握った近藤に今、爪を切られ様としているところだった。
小さな爪を真剣な眼差しで凝視する近藤に内心ヒヤリとする土方と沖田。
はっきり云って何もかも不器用な近藤に
やった事のない猫の爪切りをやらせていいものか…?
「ちょっと待ってね、ふ〜…」
と、構えていただけで何もしていないのに汗だくになっている近藤。
一度手を下ろして大きく深呼吸をしてまた爪切りを構えた。
「あんまりじらさねぇでくだせェよ…心臓に悪いんで」
(マジで緊張しまくってんじゃん)
顔では平然を装っている沖田だが、
土方は手に沖田の早く脈打つ心音を感じ取りながら心許無い近藤の震える手もとを見る。
そして、近藤が爪切りをギュっと握った瞬間、土方の頭にふ、とよぎった事…。
(ぁ、近藤さん動物の爪に血管通ってんの知ってんのか?)
パチンッ
「イッテ゛ぇ〜〜!!!」
急に暴れ出す沖田。
慌てて手を離すと畳の上でのた打ち回り、畳には赤い斑点がポタポタと出来ている。
「総悟!!大丈夫か?なんで爪から血が出てくるんだ!?トシ〜!!」
呆れてモノが云えない。
本当に知らなかったのか、
「近藤さん動物はな、爪に血管が伸びてんだ」
「そーなの!?」
沖田の前足、近藤が切ったところを見ると本当に根元ギリギリで切断してあった。
そこから真っ赤な血があとからあとから流れ出ている。
「あ〜ぁ、こりゃ完璧に深爪だな。」
「もう痛ぇから触んな!!」
慌てて引っ込めようとする手を押さえて黄色い粉の入った容器を取り出した土方に近藤と沖田が首をかしげる。
「トシ、それ何だ?」
「止血剤。これで血止めンだと」
ちょっとしっかり持ってて、と沖田を近藤の膝に座らせ近藤がガッチリと沖田をホールドする。
それを確認してから『ちょっとイテェかも知んねぇけど我慢な?』と一言置いてから
血が出ている沖田の爪の傷口に黄色い粉を少量押しつけた。
「あぁ”!!痛い!ちょ、マジ止めてくだせっ!!」
近藤の大きな腕にギュッと抱え込まれている為動くことすらできない。
ジリジリと痛む指先。
まるで爪の先が焦げていくような感覚に恐怖感がして自然と涙が溜まってきた。