□狂った悪魔
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真選組からも何人もの犠牲が出た。
途中、薬品の様な酷い刺激臭の出る液体を撒かれ
大半の隊士たちが動きを封じられ負傷した。
かなりの重傷を負った者は拾える限り運び出され、
動ける者はどんどん前へ進む。
血の匂いに交じり、火薬や人工的な異臭が辺りに立ち込めた。
敵味方関係無く気分を悪くした者が続出し
はっきり云って収拾がつかないような状態になっていた。






そんな中やっと討ち入も終わりが近づいた頃
一番隊隊長、沖田が暴走した。

敵を殲滅しても止まることなくすでに死んでいる敵に何度も刀を突き立てる。
生きている者を見つけたら急所を突き、
息絶えてもそれを止めない。
沖田自身も苦しそうに訳の解らない事を喚いている。

その場に居た生き残った数名の隊士たちも
怯えて近づく事が出来ぬまま只々唖然としていた。





最年少最強剣士の乱心。
はっきり云って敵味方の区別が付いてるかも怪しい。


至急近藤と土方が呼ばれた。
二人が駆け付けた時にはその空間だけ異様な空気と凄まじい殺気と酷い異臭が漂っていた。
そして真っ赤な血の海に、全身に赤黒い血を被った沖田が足元に転がっている何かを一心不乱に斬り裂いていた。
もう何のどの部分か変わらないくらいに突きたてられ続けた何かは沖田の足元で赤い飛沫を飛ばしている。



愕然とする近藤に“アンタは来るな”と静かに云った土方は煙草に火を付け、
ゆっくりと沖田へ近づいた。
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