リクエスト
□羞悪の念
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どこに行っても黒い隊服。
祭りごと、要人警護、攘夷浪士の取り締まり、下手をしたら黒い噂の絶えない官僚さえも尻尾を握る程の力を今は持っているともいえる武装警察真選組。
着々と活躍の場を広げ今やその存在を知らぬ者などいない程。
実にこざかしく目ざわりでうっとうしい存在だ。
まさに今、黒い噂の絶えない官僚が一人。
最近街でよく見かける様になった真選組の隊士たちに目を向け苛々と舌打ちをする。
この日もまた、攘夷浪士とのやり取りを済ませ
金儲け、地位向上の支度をせっせと行ってきたばかりだ。
その帰りに真選組を目にするなんて不快としか言いようがなかった。
信号待ちで停車した運転している部下に急げとせかす。
そこへ飛び込んできたのは
まだ少年の様なあどけなさを残す沖田の姿だった。
あれは…、と
一気は目を引く栗色の頭をじっと見つめる。
公園の前、子供たちに囲まれ
持っていたおやつを仕方なさそうに配る姿。
手を振る子供たちに無表情で手を振り返しポケットに手を入れてゆるく歩き出す。
「あれで一番隊隊長なのだからな、彼は」
こちらの視線に気が付いたのか
あたりをきょろきょろと見回す。
その姿に視線や殺気などの察知も早い事が窺える。
この若さで一番隊隊長を為すだけの力や能力が十分に備わっていると云う事は一目で分かった。
気の所為だったと判断したのか、何事も無かったかのように悠々と歩きだした沖田の脇を追いこし
ニヤリと笑う。
「帰ったらやる事がある、早く戻るぞ」