リクエスト
□寧日なし
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「今回、一番隊に3人移動させたいんだが…」
近藤と土方に呼ばれ、
局長室に入ればあまりにも突然の内容にキョトンとする。
「…はぁ、え、今の時期にですかィ?」
三名の名前と大まかな資料を手渡された。
最近…といっても一年程経つが
新しく入隊した腕の立つ三名の隊士を今回新しく一番隊へ配属するつもりとのことだ。
当たり前だが3人とも沖田より年上でそこそこ良い所の出であることが分かる。
「元々一番隊には先の捕り物で何人か新たに入れるはずだったんだ」
只、実力や隊の特性に合う人選がなかなかできなくてな。
言い淀む近藤に首をかしげる。
「何をそんなに悩んでんです?別に俺ァ今のままでも一番隊はいける気がするんですが」
「まだ少し先の話なんだが大きな捕り物を予定している。それまでに隊をまとめときたくてな、この3人任せていいか?」
土方らしからぬ言い回しに眉を寄せる。
「どうしたんですか?土方さんらしくねぇ…コイツら何かあるんで?」
「いや…、」
云い淀む土方に心配そうに見つめる近藤。
二人の態度に小さく溜息をつく。
「分かりました、じゃぁこの三人一番隊で預りやす」
新しい、といってもなんとなく見覚えのある隊士の資料を手に立ち上がると
そのまま局長室を後にした。
「トシ、やっぱり今回は見送ろう」
「いや…あいつも伊達に隊長やってるわけじゃねぇし、このまま様子を見よう」
沈黙の落ちる局長室。
沖田の一番隊に配属となった
今回の隊士三人。
確かに腕は経つし、実践もそこそこ積んでいて申し分ない。
しかし、沖田のことをよく知らないがゆえに偏見を持っている様なのだ。
新人の、特に真選組の仕事にあこがれて入ってきている者は入隊してからまず、
一番隊隊長である沖田の存在に驚く。
ある程度真選組がどのような仕事をして
どのような組織なのかは調べて来る者がほとんどだ。
しかし、内部事情までは勿論公開していない。
テレビの特集で何度か取り上げられてはいるが、
実際に会って見たのとでは
印象が全然違うようだ。
あの面であの年で一番隊隊長といわれても確かに疑ってしまうだろう事は必然。
事実、真選組への憧れで入ってきた者のほとんどは
まず沖田の存在にヤキモキすることとなる。
そのたびに沖田は白い目で見られ、
いい大人から陰口をたたかれている。
沖田が18となった今でも同じような事は何度となく繰り返されている。
そして今回の彼ら3人もまた、
沖田に対して良い印象を持っていないことは近藤や土方の耳にも入ってきていた。
元から居る隊士、沖田の実力を知っている者は沖田を敬愛している者、
または弟のように可愛がる者がほとんどだ。
そこに至るまでに少々時間を要する為に
一番隊への新人の配属は早めに行う様にしているのだった。