猫科悲劇
□猫科悲劇:7
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最近,駄菓子屋に行っても団子屋に行っても姿を見ないな〜,とは思っていたんだよな,沖田君。
まさかあんな事になっていたとは…
はっきり云って真選組の連中とは関わりたくねぇんだよなぁ〜…
めんどくせぇ。
いつものように団子屋で団子を口いっぱいに頬張る銀時。
バックレるか?なんて思いながら新しい串に手を伸ばし口へと運ぶ。
すると横から不意に聞き覚えのある声が聞こえた。
「あ!旦那じゃねぇですかィ,ちょいと俺にもこの団子分けてくだせぇ。朝から何も食ってないんでさァ」
ほら噂をすれば…
「おいおい金持ってんだろ?自分で頼め…って沖田君,もう外出ても…」
『いいの?』と続ける前に言葉が切れる。
隣に目をやると人の姿がどこにもない。
その代わり椅子の上には,自分が頼んだ団子をがつがつと食べている小さな猫がいた。
それはもう飢えた様に団子にがっつき,皿の上の団子が次々と消えてゆく。
「あぁ,もう見ての通り完全体なんで。」
見ため的にはご心配なく−,と付け足し、その間も食べる事をやめずに口をもごもごと動かしながらしゃべる猫。
「あっそ…,へ?ど−ゆ−こと」
「ど−ゆ−こともなにも,こ−ゆ−ことでさァ」
今朝起きたらこうなってやした!と云うと,顔を上げピシっと姿勢を正すように座りなおす猫。
いまだに口の周りをペロペロ舐めながら,
猫の丸く大きな赤い目が銀時を見据えてた。
沖田の声がするたびに猫の口がパクパク動くところを見ると、この声は猫の口から出ているもので、この猫は完全に沖田だという事になって…,つまり…