猫科悲劇
□猫科悲劇:9
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腹が空いたままの沖田はどこに行くでもなく只々彷徨い,気が付けば昼間の団子屋の前まで来ていた。
なにを考えるでもなく昼間と同じ道を通り屋根の上へと昇る。
「すげぇ・・・」
月のでかいこと。
星だってたくさん出ていて綺麗だった。
ちょこんとその場に座り思い耽る。
すると背後に殺気を感じ,ピンと神経を尖らせた。
「居た居た。よぉ、チビ助」
振り向かずとも分かる。
昼間、沖田が回し蹴りでココから吹っ飛ばしたどら猫だ。
「なんでィ、テメ−もしつけぇな。昼間の仕返しかィ?」
そう云ってゆっくりと後ろを振り向きギロリと睨みつける。
そこには昼間のどら猫以外にも、あと2匹別の猫がいた。
2匹とも何年も野良猫をしているのであろう。薄汚れていてケンカ傷も結構目立っていた。
2匹とも唸りながら飛掛らん勢いで沖田の事を睨んでいる。
「お仲間さんですかィ。テメ−の仕返しならテメ−だけで来やがれってんでィ」
そう呆れたように云う沖田に何故か余裕のどら猫がフン、と鼻で笑ってみせた。
「残念ながらそうじゃない。此処いら仕切ってんのは俺だけじゃなくてね、お前さんの噂聞きつけて何匹も飛んで来たぜ」
そう云うどら猫に気を取られていると今まで唸るだけだった猫2匹がゆっくりとにじり寄って来た。
それに合わせるようにどら猫もゆっくりと近づいてくる。