□暗いのコワイ
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ある日、近藤さんちに皆でお泊り。


最近ぼちぼち増えてきた門下生も、
勿論一番最年少のまだ10にも満たないガキンチョも
日頃味わえない“お泊まり”と云う名のワクワクドキドキ感にはしゃいでいた。




昼から夕方にかけての練習を終え、夜になれば近藤さんも酒が入り、
更にはしゃぎ方にも拍車がかかっていた。

子供の総悟は飯を済ませ
先ほど一足先に風呂へ行かせた。







そろそろ酔っぱらいどもの収拾がつかなくなってきたころで土方は厠へ立った。
用を済ませ、電気を消そうとスイッチを何気なくポチリ。
共に消えるはずの照明が消えない事にハッとしたのもつかの間



「ンぎゃぁぁあぁぁあ゛!!」


ガラガラ、バタン!ガッシャーン!!
耳をつんざく様な甲高い子供の悲鳴と物凄い音。



「ぁ、間違った…」


土方が押したのは『廊下』『脱衣所』『風呂』『厠』の4つのスイッチの集合体の中の
『風呂』

勿論真っ暗になったのは風呂場。



そして悲鳴と共にバタバタと出てきたのは体中泡々だらけの総悟。





「なにしやがんでィ!バカぁ!!わざとだな土方コノヤロ−」


半泣きになりながら全身泡まみれで土方に飛びつく。
腰のあたりに腕を回し、
足も土方の足に絡み付く。
云わばコアラ状態の総悟。
(勿論泡まみれ)


「コラ、てっめ!着物が濡れるだろーが!!」

慌てて引き剥がそうとするがギュウギュウと絡み付く手足は離れるどころか、剥がされまいと腹のあたりまでよじ登りより一層きつく絡み付く。


「く、苦し。そーご、ちょ、なんか出る!」


「ざ、ざまぁみやがれぃ!!」


と顔を上げたSっ気の強い子供は
土方の苦しむ姿に笑おうとも、
半泣き状態で引き攣った笑顔になっていた。






丁度その時、声を聞きつけたのかバタバタと走る音が聞こえたかと思うと
これまた全裸に近い状態の近藤達が顔を真っ赤にして『どうした、どうした』と息を切らせて走ってきた。


状況を把握した近藤は
酔いも回った状態で豪快に声をあげて笑った。

「なぁ〜んだトシィ〜、まーた間違えたのか?」

「何がどこのスイッチか書いとけっつったろ?…あ〜ぁ、こりゃ着替えないとな」

めんどくさそうに泡だらけの総悟と水気を吸い込んだ自分の着物を見比べた。








『ちょっとビックリしただけでさァ!』
と云い張る総悟だったが、
罰として一緒に入れ!と強制してきた。

ギャアギャア云いながらも(相当怖かったらしく一人で風呂場にも行けなくなった総悟を)体が冷えつつあった為、
無理矢理湯船に突っ込み自分も並んで湯に浸かる。









結局、一緒に入ってやったのに風呂から上がった後も総悟にどやされ続けた土方であった。












   *御仕舞*
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