リクエスト
□壊れた硝子の心には
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体が回復しどんどん活気づく隊士たちとは裏腹に
いまだに元気も覇気も無く沈んだまま浮きあがってこない沖田の心は
今だに、あの戦地の中に居るのだろうことは隊士の誰もが感じ取っていた。
その所為かは分からないが沖田の傷の状態が一向によくならないのも気がかりの一つだった。
只でえ慣れない宇宙空間の中、
本人は平然を装う様に窓の外を眺め景色の変わらぬ宇宙の彼方にひたすら視線を巡らす。
慣れない環境ではあるが
ゆっくり体も心も癒せるひと時だと言うのに、一向に治る気配を見せない沖田の傷は
今だに包帯に赤い染みを作る。
気分がすぐれない事は顔色を見ただけで分かった。
その日の朝、食堂へと向かった山崎は見兼ねて
すれ違う沖田の肩に触れた。
「沖田さんちょっと、さすがに…このままだと良くないです」
ゆっくりと振り返った沖田の目は
いつもにもまして冷めきっていた。
「…ほっといてくれ」
覇気がない声。
ポトリと落とす様に言い残すとフラフラと自分の部屋へ戻って行った。
その小さくなった後ろ姿を見送って小さく溜息をつくとそのまま食堂に入った。
食事を持って適当に席に着いた山崎は
数人いる隊士から沖田がちゃんと食事をしていたか聞く。
まだ食べれている様だったのでひとまず胸をなでおろした。
みんな気にかかっているのだろう。
大体の奴に聞けば返事が返ってくる。
少しでも沖田の様子がおかしければ近藤か土方に報告しに行っている様だ。
暗い宇宙空間で、
太陽がない人工的な光の中で食べる朝食は、やっぱり地に足が付いている時とは違う気がして違和感だらけだ。
この設備が整った居心地のいい違和感だらけの船の中、
沖田はいろんな意味で常にストレスを感じ続けているのかもしれないな、と山崎は思った。