リクエスト

□壊れた硝子の心には
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日に日に弱って行く沖田を見兼ねた近藤はある日の夜
土方と共に沖田を呼んだ。

近藤は只、沖田に
以前の様に戻って欲しかった。



呼ばれて現れた沖田はやはり
どこか落ち着きがなく浮かない表情をしていた。
遅れてやって来た土方も
沖田の様子に表情を歪めた。



「…何か用ですか?」


今まで黙っていた沖田が
痺れを切らしたのか声をかけた。


「用ってほどの事じゃないが…ホラ、久々に3人で川の字で寝ようと思ってな!」


「ハア!?」


声をあげたのは土方だった。
いくら沖田との距離を近づけようとも3人で寝ることはない!と、そう言いたい土方だったが
近藤の"お願い!"というジェスチャーに
何も言えなくなる。



「昔はよくみんなで一つの部屋に布団敷き詰めて寝てただろ?」


「何で今更そんなことするんですか?」


「たまには雑魚寝もいいだろ?」


「…俺は結構ですから」


そう言い切ると
立ち上がろうとする沖田を土方が慌てて止めに入る。


「総悟!たまには良いじゃねぇか、近藤さんがこういってるんだからよ」


「アンタだって嫌がってただろ」


「嫌がってねぇよ、ちょっとびっくりしただけだ」



あくまでも平然を装って
タバコに火をつけやり過ごす。


「トシもこう言ってるし、たまには良いだろ?な、総悟」


どうしても渋る沖田をなんとか座らせ
説得を試みる。
2人の必死な様子に
沖田は深く溜め息をついた。


「俺に、気を使ってるんですか?」


「な…なんで、そう思う」


「何か言いたいことがあるんじゃないですか?」


でも言い渋っている、
そんな雰囲気を感じた沖田はゆっくりと近藤に目を合わせる。



「お前がいつまでもそんなんだからだよ」



煙と共に吐き出した土方の言葉は
いやに静かだった。



「俺は別に、ちょっと疲れてるだけでさぁ」


「総悟、もう無理しなくて良いんだ」


「無理なんかしてねぇです。俺の問題なんで、放っといてくだせぇ」


また立ち上がろうとする沖田の腕を
土方が掴んで引き寄せると
簡単にバランスを崩し膝をついた。


「こんなフラフラで、傷の治りも遅せぇ」


「…うるせぇ」



「ずっと寝てねぇだろ」


「うるせぇって言ってんでぇ!」


肩で息をする様に声を荒げ
掴まれた腕を振り解く。
反動で後ろに傾いた背中を支えたのは近藤だった。

とにかく今日は3人で寝ような、と
優しく微笑んだ近藤の声に沖田は静かに頷いた。
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