猫科悲劇
□猫科悲劇:4
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いつの事だったか,まだ最近だったと思う。
初めて爪磨ぎをしている姿を廊下で見つけた。
その時は廊下にある少し大きめの柱にしていたのだが,声をかけるとハッとした顔でこちらを向いた。また『うっせぇよ,土方しね』と,バズーカでも打ってくるのかと思いきや泣きそうな顔をして走り去ってしまった。
あの時が初めてだったのか,まさか自分が爪磨ぎまで始めてしまうとは思わなかったのだろう。
かなりショックだったのだろか。
様子を見に行ったがしばらく自分の部屋から出るどころか返事すらなかった。
だが,思ったよりも早く沖田の部屋の襖が開いた。出てきた沖田は悩ましげに首をかしげ真剣な顔つきだった。
しかし,何かひらめいたのであろう。
急に走り出すと土方の部屋へ一直線。
何も云わずにスパーン!!と襖を開け,ずかずかと中へ入ると
先ほどのように畳をバリバリ引っ掻きはじめた。
自分の部屋の畳をボロボロにするのは嫌だ,でも爪磨ぎしたい欲求に勝つ事が出来ない…故に考え付いた方法が“土方の部屋”であった。
最初は土方も『早く帰れ!』とか『自分の部屋でやれ!』と云っていたのだが
勿論,聞くわけもなく
『や〜でさ,畳がボロボロになりまさぁ』
と平然と云ってのけた沖田に土方は眉間を抑え頭痛に耐えていた。