短
□昔見た星空
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沖田がまだ近藤の腰程の背丈しかなかった頃。
近藤と沖田
数日前、突如近藤が拾ってきた土方と
3人で山の中へと分入っていたときの事。
ちょうど秋口だったと思う。
綺麗な紅葉が見えると密かに噂の森があった。
その日、夕方の稽古を早目に切り上げ近藤は急に紅葉を見に行こうと言い出した。
まだ拾って間もない野良犬のような土方。
それをあからさまに嫌がる沖田。
2人を少しでも近づけたかったのだろう。
土方が来るなら行かないと駄々をこねた沖田の小さな手を引き茂みを掻き分け進む。
土方も黙って2人について来た。
獣道がかろうじてあるような場所を
3人でひたすら進むと
綺麗な紅葉が一望できる丘へ出た。
「…わぁっ!!すげーや近藤さん!」
「だろう?」
嬉しそうにする沖田に優しく笑いかけ
2人は一通りはしゃいでいた。
一歩引いた場所からそんな2人と綺麗に色付いた紅葉を眺める土方は小さく溜め息をついた。
暗くなる前に帰るか、と下山する。
生い茂る森はまだ日があるのに気味が悪いほど暗く沖田の身長を超える草が生い茂っている。
近藤が逸れないようにと促し歩みを進める。
草に埋もれないよう必死に近藤の踏み締めた草の上を掻き分け歩いていると、すぐ脇にある草むらに見たことがないような綺麗な花が咲いていた。
姉への手土産にと思い、すぐ横が崖になっているとも知らず小さな手をいっぱいに伸ばし身を乗り出した。
あと少しで鮮やかな花に手が届くと言うところで踏み締めたはずの地面が抜けたような感覚。
「…ぇっ」
「おい!総悟!!」
慌てたような声に咄嗟に手を伸ばす。
その手を掴もうとしてくれた大きな手は空を切り、小さな体は崖下へと落ちていった。
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